表 紙(P.1)

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目 次(P.2)

           □ 序(P.3)

           □ 助産師の行う助産は医療行為である(P.4)

           □ 助産(P.5-6)

           □ 反論(P.7)

           □ 正義(P.8)

           □ 罪とは(P.9-10)

           □ 違法行為に対しては(P.11)

           □ 二つの法の狭間で(P.12-13)

           □ 猿の惑星(P.14)

           □ 月とスッポン(P.15)

           □ 呉越(P.16)

           □ アリバイ(P.17)

           □ 法的業務区分(P.18-19)

序(P.3)

 理論を進めて行く上で最初に決めておかなくてはならないのが出発点である。この出発点が異なっていればその先、どんな進んだ理論が構築されて行こうが異なった理論が交わることはない。

最初の出発点とは、

Ⅰ、助産師の行う助産は医療行為である。

Ⅱ、助産師の行う助産は医療行為ではない。

まずこの2つの違う出発点から話を進めて行こうと思います。

助産師の行う助産は医療行為である(P.4)

 

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 Ⅰ、まず“助産師の行う助産は医療行為である”。の仮定のもとに話を進めてゆきます。

図1のごとく医療を行う側に医師と助産師が位置する。その指示下に看護師准看護師が置かれる。ここに存在する法的理論は①助産は医療行為である。②内診は助産行為である。よって③内診を行うことが出来るのは医師と助産師のみである。

 上記理論はこの国の法に照らし合わせてみて正しいだろうか。ここで基本的に矛盾が起こるのが医師法17条である。

医師法第17条  医師でなければ、医業をなしてはならない。 このつじつまを合わせる為に“助産師は一定の条件下で一部の医療行為を許されている職種である”との例外的解釈を講じた。法の例外なのである。と、言うことは正式にはこの行為は違法なのではないか。またこの例外を設けるに足りる法規定がない。

結論:助産師が一部の医療行為を行うことができる業種とするのは無理がある。 図1の解釈は誤り。

助産(P.5)

 

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Ⅱ、助産師の行う助産は医療行為ではない。と仮定する。

助産は図2のA:保健師助産師看護師法下における助産と、B:医師法下における助産の2通りあると考えられる。

A :助産師は保健師助産師看護師法下で助産を行う。ここに医療は存在しない。

B :医師は医師法下で分娩を取り扱う。これは医療であって、医療の部分は助産師看護師准看護師は入ってこれない。コメディカルは医療の補助として助産に参加する。ここでは助産師看護師准看護師の3者に医療の補助としての内診が許されている。

助産を保健師助産師看護師法下の助産と医師法下の助産の2通りあると解釈すればすべて無理なく解決つく。

結論:助産師単独で扱う助産は医療ではない。(図2のA)

医療機関における助産師は医療の補助者であり、医療そのものを行うものではない。(図2のB)

助産(P.6)

 

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上記図のA:保健師助産師看護師法下で行われる助産は、助産師の独壇場である。ここは医師、看護師は介入出来ない場所となる。例とすれば助産所内での分娩がそれにあたる。ここでは医師も口を出すことは出来ない。

Aの場所で看護師が助産を行うことができないのは明白である。だが”助産の補助”を行うことは認められているだろうか。

看護師に許されているのは看護業務と医療の補助の2つの業務である。保健師助産師看護師法5条

この場所で看護師は助産および助産の補助はできない。この場所では看護師がたとえ助産師の指示の基でも内診を行うことは違法である。

この場所では医療そのものが存在しない為、看護師の内診を医療の補助とみなすことはできない。

結論:保健師助産師看護師法下で行われる助産での看護師の内診は違法。

注:(看護師は保健師助産師看護師法下においても褥婦の世話や新生児の世話をすることは認められている。こういったことは看護業務にあたる。助産そのものについての業務に携わるのがいけないのである)

反論(P.7)

反論「1」

助産師が帝王切開をしようとしたら医師が「それはならん」と言うのと、看護師が内診しようとしたら助産師が「それはならん」と言うのは同じことではないですか。

同様にそれぞれの立場で正義を貫こうとしているだけです。

反論「2」

医師は医師法さえ守っていれば保健師助産師看護師法を犯しても罪にならないというのか。

同じこの国の法ではないか、いかに医師といえどもこの国に現存する法は守らなくてはならない。

看護師も同じことだ。例え医師から命令されたことであろうと、それが法に反することならその命令に従ってはならない。違法なことを為せば看護師も罪をかぶることになる。

正義(P.8)

罪とは(P.9)

反論「2」

医師は医師法さえ守っていれば保健師助産師看護師法を犯しても罪にならないというのか。

同じこの国の法ではないか、いかに医師といえどもこの国に現存する法は守らなくてはならない。

看護師同もじことだ。例え医師から命令されたことであろうと、それが法に反することならその命令に従ってはならない。違法なことを為せば看護師も罪をかぶることになる。

反論「2」に対して

法を破ればたとえ医師であろうと罪をかぶるのは当然である。しかしこれは”保健師助産師看護師法違反”に該当しないと言っているのである。看護師も同様である。

助産師でなければ助産行為をしてはならないという保健師助産師看護師法30条が医師法下では通用しないのである。助産が許されている法は2つ存在する。

a、助産師が保健師助産師看護師法30条下で行う助産とb、医師が医師法下で行う助産である。

この2つの法のどちらかに属していれば助産を行ってよい。2つの法のうち1つが満足されていればよいのである。

ここに助産師でなければ助産行為をしてはいけないという大前提がある。しかしこの保健師助産師看護師法30条を満足させていない場所での分娩も認められている。それが医師法医下という場所である。医師法を満たしていれば保健師助産師看護師法30条を満たす必要はない。

罪とは(P.10)

 医師が保健師助産師看護師法30条違反をしたというのは以下のような場合にしか適用されない。

@:医師が自分のうちの看護師を助産所に派遣しそこで分娩の取り扱いをさせた。ここは医師法下にない。よってこの場合、この医師、看護師は保健師助産師看護師法違反をしたと言える。

では保健師助産師看護師法下、医師法下、以外の場所での分娩は犯罪になるだろうか。

離島や山間部で医師も助産師もいない場所で、妻の分娩を夫が取り上げた場合、その夫は罪をかぶらなくてはならないだろうか。そんなことはない。それは犯罪ではない。法はそれを業とするものは資格がいると言っているのである。助産師資格がないのにその島でそのなりわいをすることを禁じている。お産自体は犯罪ではない。

離島で夫がその妻の妊娠中絶をした場合はどうか、これは犯罪である。

経口中絶薬も出てきた。まんざらないことではないだろう。

違法行為に対しては(P.11)

違法行為に対しては断固弾劾するという考えに相違はない。

例えば診療放射線技師法違反:

診療放射線技師法では医師、歯科医師、診療放射線技師の3者しかレントゲンを照射してはならないと規定されている。看護師にレントゲンを撮らせることは違法なのである。これは医師が命令してもいけないし、看護師がその命令に従っても違法である。たとえ医師が急がしすぎて放射線技師が充足していなくても看護師が行ってはいけない。これだけの数の患者をこなす為、これは患者の為、住民の為にしかたなく行っているのだから開業医では看護師にレントゲンを撮らせることを認めてくれ、という理論は成り立たない。違法は違法である。

http://www.houko.com/00/01/S26/226.HTM#s4

診療放射線技師法第24条 医師、歯科医師又は診療放射線技師でなければ、第2条第2項に規定する業をしてはならない。

二つの法の狭間で(P.12)

 

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 助産師達は自分が今、保健師助産師看護師法下にいるかそれとも医師法下にいるかの区別がつかないでいる。厚生労働省も同様である。医師でさえもこの区別がつかないでいるものが大勢いるのではないだろうか。今、起こっているすべての齟齬はこの勘違いに由来しているように思える。

助産師は保健師助産師看護師法下にいるかそれとも医師法下にいるか。私は助産師は法的にはこの2つの法の間を自由に行き来できる存在であると考えている。まるで転座遺伝子のように瞬時に変身し、セルとセルのあいだを行きかう。

 図2のA、ここは例えば開業助産所での仕事である。ここは保健師助産師看護師法下に置かれる。

病院内で勤務することもある、図2のB。ここでは医師の指示の下で働く。医師法下にある。ここでは医療に参加できる。例えば産科手術の手伝い、諸検査、陣痛促進剤の使用等、医師の指示下では多様な仕事に係わるのである。

二つの法の狭間で(P.13)

 しかし、病院内にあっても保健師助産師看護師法下の助産師に戻ることも可能である。例えば医師が分娩室に不在、手術中とか往診中とかといった場合、院内の分娩室において保健師助産師看護師法下の助産師として助産師単独で分娩を扱う構図は可能である。ただし保健師助産師看護師法下の助産師に戻ったとき助産師は医療行為を行うことは出来ない。医療行為を行う為には医師の指示がいる。扱えるのは正常分娩のみである。

 同様な構図であってもすべて医師法下にあるとする解釈も成り立つであろう。その場合この助産師は医師の指示下で正常分娩を扱ったことになる。つまりA 区間に戻らなくていい。

猿の惑星(P.14)

 

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図3の上段、”医療”の位置での内診と下段”医療の補助”としての内診は同列ではない。重要度の問題だけではない。法的意味合いが異なって来る。

 例えば帝王切開をするか否か最終判断の為の内診は上段になるだろう。このような大事な内診は看護師准看護師には許されない。助産師にもその行為は許されていない。それは医師が行わなくてはならない。もし助産師が内診をし、助産師が帝切と決めて医師に手術の指令を出すようなことがあれば、これは猿の惑星である。立場が逆転する。それはただ仕事上の立場が逆転しただけではない。この国の法律違反である。医師でないものが医療を行った。医師法違反が適用される。

 助産師は上の段には入れない。医師法下では看護師准看護師と同様、”医療の補助”を行うのである。 医師の威厳を保つ為にこのようなことを言っているのではない。

こうして法を厳守し秩序を守ることはこの国の国民を守ることにつながるのである。

月とスッポン(P.15)

 

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図B :医師法下で働く助産師の法的身分を考えてみたい。

 

その前に、はたして助産師は医療の補助を行うことができるのか。

 

助産師が行えるのは助産行為であって、医療の補助は行うことができない。助産師という名称身分ではこれを行うことができないのである。

 

助産師が医療の補助を行うことができるとされる唯一の根拠は保健師助産師看護師法31条保健師助産師は看護師の業をおこなうことができる。という一文によるものである。

 

医師法下で扱われる医療では助産師は法的には 「看護師」となる。看護師であるから医療の補助を行う事ができる。医療が産科医療、助産であっても法的には同様である。

 

図B :医師法下では助産師、看護師、准看護師に法的差異はない。

 

助産師ならやらせてよく看護師にはさせていけないという業務は法的には存在しない。

 

図A :保健師助産師看護師法下の分娩においては助産師と看護師の差は月とスッポンである。

 

図A の枠の法を、図B の枠で適用しようとしてはいけない。

呉越(P.16)

 

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2006年9月、越王は愛育城に呉王をまねき、こう言った。

「呉王よ、わたしはあなたの国に足を踏み入れるつもりは毛頭無い。またあなたやあなたの領民が我が国に入り、我が国で仕事をするのをじゃまするつもりもない。ただあなたの国の法でわたしの領民を裁くのは止めてくれないか。わたしの国の秩序を乱さないで欲しいのだ。頼んでいるのはただそれだけなのだよ。わたしの国の領民があなたの領地であなたの国の法を犯したのならいかようにも裁いてくれてよい」

アリバイ(P.17)

――内診は医療の補助ではなく助産行為です――

上記文章について検証してみたい。

 Aの事象が正しければBの事象は間違っている。Bの事象が正しければAの事象は間違っている。2つの事象が同時に成り立つことはない。こういう2つの事象の関係なら、一方が間違っていることを証明する為には他の一方が正しいことを証明すればそれで足りる。

 例を上げれば大阪で起こった殺人事件の実行犯に自分が仕立て上げられたとする。いろんな状況証拠は揃っている。動機も充分考えられる。自分がその殺人現場にいなかった証明を大阪ですることは難しい。だがその時刻に熊本にいたことが証明できれば自分が大阪にいなかったことが証明できる。多数の人がその時刻に熊本で自分の講演を聴いていた。それで足りる。アリバイの証明というやつである。

 "助産行為である"ということが証明できれば"医療の補助ではない"ということが立証可能であろうか。

2つ同時に成り立つという事象はありうる。例えばお前は日本人だ。だからアメリカ人ではない。そうは言えない。2重国籍を持つ人もいる。2つの事象が同時に成り立つ例はいくらでもある。

 内診は医療の補助の補助であると内診は助産行為であるの2つの事象は同時に成り立ってよい。

"内診は助産行為である"ことが正しいということは"内診は医療の補助の補助でない"ということを証明するものではない。

上記文章は

"内診は助産行為でもあるし、同時に医療の補助ともなる"が正しい。

法的業務区分(P.18)

医療の補助における法的業務区分

1、助産師にはやらせてよく、看護師にはやらせてはいけない業務

2、看護師にはやらせてよく、准看護師にはやらせてはいけない業務

とは何か?その業務区分を考えてみたい。

◎看護師は"看護業務"+"医療の補助"ができる。

  保健師助産師看護師法5条

◎准看護師は医師、看護師の指示の下で"上記業務"ができる

  保健師助産師看護師法6条

看護師と准看護師の違いは、看護師は"自分の判断で看護業務ができる"、准看護師は"自分の判断で看護業務ができない"です。"医療の補助"については両者とも医師の指示下でなくてはならない。言いかえれば医師の指示下では同等な"医療の補助"という行為ができる。

◎助産師は"看護師と同様の業務"+"助産"ができる。

保健師助産師看護師法31条:

 保健師及び助産師は、前項の規定にかかわらず、第五条に規定する業を行うことができる。

法的業務区分(P.19)

医師法下における医療行為において、医療の補助という立場でこの業にたずさわるこの3者に法はその業務の違いを示してはいない。

(注:これは医師法下では同等ということであって、医師法下と別個に助産師には助産師単独で助産をあつかっていいという権限を与えている)

よって医師の指示の下では

1、助産師にはやらせてよく、看護師にはやらせてはいけない業務

2、看護師にはやらせてよく、准看護師にはやらせてはいけない業務

といったものは存在しない。

保健師助産師看護師法

 

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S23/S23HO203.html

3、では医師なら行ってよく、助産師、看護師、准看護師は行ってはいけない業務とはなにか。

それは医療である。医師法17条

医師法

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S23/S23HO201.html

                                 著    者   八 木 謙

                                 発行者   八 木 謙

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