表 紙(P.1)

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目 次(P.2)

           □ 序(P.3)

           □ 法(P.4-5)

           □ 看護協会の考え方(P.6)

           □ 助産師の助産を医療であるとする仮説(P.7-8)

           □ 助産師による助産は医療ではない(P.9-10)

           □ 保健師助産師看護師法下での助産は(P.11-12)

           □ 2つの法の狭間で(P.13-14)

           □ 業務分担(P.15-16)

           □ 医政局長のあやまり(P.17)

           □ 医療業務(P.18)

           □ 放射線技師法と医師法(P.19-22)

           □ 助産師法(保助看法)と医師法(P.23-24)

           □ 各論(P.25)

           □ 医療事故があったとき(P.26)

           □ 攻撃に遭ったとき(P.27)

           □ 各論(P.28-31)

           □ 法の関係図(P.32)

           □ 正常分娩(P.33)

           □ パラドックスの解決(P.34)

           □ 保助看法第30条(P.35-36)

           □ 医師 看護師 助産師の仕事(P.37)

           □ 確認(P.38)

           □ 結語(P.39)

           □ 分娩における医師、助産師、看護師の役割分担と連携等について(P.40)

           □ 単純明快なことなのです。(P.41)

序(P.3)

 

こんな難しい手術ができるのはうちの教室では教授と助教授だけだ。

 

こんな手術を平の医局員にやらせてはいけない。

 

だがそのときもしその医局員がその手術を行ったとしてもこの国の法を犯した訳ではない。

 

彼は有資格者なのだ。

 

准看護婦にこんな仕事をさせてはいけない。と言われたとき、それが無資格行為に当たるか否か。

 

今日、私が行うのはそれが違法ではないということを証明して行くことです。

法(P.4)

 

■医師法

 

■保健師助産師看護師法

 

 保健師法> 助産師法 看護師法の3つが合わさったもの

 

■診療放射線技師法

 

Ⅰ、医師法

 

第17条 医師でなければ、医業をなしてはならない。

 

Ⅱ、保健師助産師看護師法

 

第3条 この法律において「助産師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、助産又は妊婦、じよく婦若しくは新生児の保健指導を行うことを業とする女子をいう。

 

第5条 この法律において「看護師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、傷病者若しくはじよく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする者をいう。

法(P.5)

 

第6条 この法律において「准看護師」とは、都道府県知事の免許を受けて、医師、歯科医師または看護師の指示を受けて、前条に規定することを行うことを業とする者をいう。

 

第30条 助産師でない者は、第3条に規定する業をしてはならない。ただし、医師法(昭和23年法律第201号)の規定に基づいて行う場合は、この限りでない。

 

第31条 看護師でない者は、第5条に規定する業をしてはならない。ただし、医師法又は歯科医師法(昭和23年法律第202号)の規定に基づいて行う場合は、この限りでない。

 

2 保健師及び助産師は、前項の規定にかかわらず、第5条に規定する業を行うことができる

。  

第32条 准看護師でない者は、第6条に規定する業をしてはならない。ただし、医師法又は歯科医師法の規定に基づいて行う場合は、この限りでない。

 

Ⅲ、診療放射線技師法

 

第24条 医師、歯科医師又は診療放射線技師でなければ、第2条第2項に規定する業をしてはならない。

 

第2条 2 この法律で「診療放射線技師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、医師又は歯科医師の指示の下に、放射線を人体に対して照射(撮影を含み、照射機器又は放射性同位元素(その化合物及び放射性同位元素又はその化合物の含有物を含む。)を人体内にそう入して行なうものを除く。以下同じ。)することを業とする者をいう)。

看護協会の考え方(P.6)

 

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助産師の助産を医療であるとする仮説(P.7)

 

図1のごとく医療を行う側に医師と助産師が位置する。その指示下に看護師准看護師が置かれる。ここに存在する法的理論は①助産は医療行為である。②内診は助産行為である。よって③内診を行うことが出来るのは医師と助産師のみである。

 

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助産師の助産を医療であるとする仮説(P.8)

 

 前頁理論はこの国の法に照らし合わせてみて正しいだろうか。ここで基本的に矛盾が起こるのが医師法17条である。

 

医師法第17条  医師でなければ、医業をなしてはならない。

 

このつじつまを合わせる為に“助産師は一定の条件下で一部の医療行為を許されている職種である”との例外的解釈を講じた。法の例外なのである。と、言うことは正式にはこの行為は違法なのではないか。またこの例外を設けるに足りる法規定がない。

 

結論:助産師が一部の医療行為を行うことができる業種とするのは無理がある。

 

図1の解釈は誤り。

助産師による助産は医療ではない(P.9)

 

助産は図2のA:保健師助産師看護師法下における助産と、B:医師法下における助産の2通りあると考えられる。

 

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A :助産師は保健師助産師看護師法下で助産を行う。ここに医療は存在しない。

 

B :医師は医師法下で分娩を取り扱う。これは医療であって、医療の部分は助産師看護師准看護師は入ってこれない。コメディカルは医療の補助として助産に参加する。ここでは助産師看護師准看護師の3者に医療の補助としての内診が許されている。

助産師による助産は医療ではない(P.10)

 

助産を保健師助産師看護師法下の助産と医師法下の助産の2通りあると解釈すればすべて無理なく解決つく。

 

結論:助産師単独で扱う助産は医療ではない。(図2のA)

 

医療機関における助産師は医療の補助者であり、医療そのものを行うものではない。(図2のB)

保健師助産師看護師法下での助産は(P.11)

 

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上記図のA:保健師助産師看護師法下で行われる助産は、助産師の独壇場である。ここは医師、看護師は介入出来ない場所となる。例とすれば助産所内での分娩がそれにあたる。ここでは医師も口を出すことは出来ない。

保健師助産師看護師法下での助産は(P.12)

 

Aの場所で看護師が助産を行うことができないのは明白である。だが”助産の補助”を行うことは認められているだろうか。

 

看護師に許されているのは看護業務と医療の補助の2つの業務である。保健師助産師看護師法5条

 

この場所で看護師は助産および助産の補助はできない。この場所では看護師がたとえ助産師の指示の基でも内診を行うことは違法である。

 

この場所では医療そのものが存在しない為、看護師の内診を医療の補助とみなすことはできない。

 

結論:保健師助産師看護師法下で行われる助産での看護師の内診は違法。

2つの法の狭間で(P.13)

 

助産師達は自分が今、保健師助産師看護師法下にいるかそれとも医師法下にいるかの区別がつかないでいる。厚生労働省も同様である。医師でさえもこの区別がつかないでいるものが大勢いるのではないだろうか。今、起こっているすべての齟齬はこの勘違いに由来しているように思える。

 

助産師は保健師助産師看護師法下にいるかそれとも医師法下にいるか。私は助産師は法的にはこの2つの法の間を自由に行き来できる存在であると考えている。まるで転座遺伝子のように瞬時に変身し、セルとセルのあいだを行きかう。

 

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2つの法の狭間で(P.14)

 

 図2のA、ここは例えば開業助産所での仕事である。ここは保健師助産師看護師法下に置かれる。

 

病院内で勤務することもある、図2のB。ここでは医師の指示の下で働く。医師法下にある。ここでは医療に参加できる。例えば産科手術の手伝い、諸検査、陣痛促進剤の使用等、医師の指示下では多様な仕事に係わるのである。

 

 しかし、病院内にあっても保健師助産師看護師法下の助産師に戻ることも可能である。例えば医師が分娩室に不在、手術中とか往診中とかといった場合、院内の分娩室において保健師助産師看護師法下の助産師として助産師単独で分娩を扱う構図は可能である。ただし保健師助産師看護師法下の助産師に戻ったとき助産師は医療行為を行うことは出来ない。医療行為を行う為には医師の指示がいる。扱えるのは正常分娩のみである。

 

 同様な構図であってもすべて医師法下にあるとする解釈も成り立つであろう。その場合この助産師は医師の指示下で正常分娩を扱ったことになる。つまりA 区間に戻らなくていい。

業務分担(P.15)

 

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看護師は“看護業務”+“医療の補助”ができる。

 

(保健師助産師看護師法5条)

 

准看護師は医師、看護師の指示の下で“上記業務”ができる。

 

(保健師助産師看護師法6条)

 

看護師と准看護師の違いは、看護師は“自分の判断で看護業務ができる”、准看護師は“自分の判断で看護業務ができない”です。“医療の補助”については両者とも医師の指示下でなくてはならない。言いかえれば医師の指示下では同等な“医療の補助”という行為ができる。

業務分担(P.16)

 

助産師は“看護師と同様の業務”+“助産”ができる。

 

(保健師助産師看護師法31条:

 

 保健師及び助産師は、前項の規定にかかわらず、第5条に規定する業を行うことができる)

医政局長のあやまり(P.17)

 

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看護師等は分娩期においては、自己の判断で分娩の進行管理を行うことができず、医師又は助産師の指示監督の下、診療又は助産の補助を担う。

 

看護師は助産の補助はできない。

 

助産師は看護師にその補助を委任する権限を持たない。

医療業務(P.18)

 

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◎助産師と看護師の業務の違いは助産師は医療の枠外で単独で助産を扱うことができる。だけである。

 

◎医療は医師による医療行為と准看護師看護師助産師による医療の補助とで成り立つ。

放射線技師法と医師法(P.19)

 

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放射線技師法と医師法(P.20)

 

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診療放射線技師法を引き合いに出します。

 

診療放射線技師法第24条

 

医師、歯科医師又は診療放射線技師でなければ、第2条第2項に規定する業をしてはならない。

 

医師歯科医師はこの診療放射線技師法の枠内でレントゲンを撮っています。

放射線技師法と医師法(P.21)

 

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放射線技師法と医師法(P.22)

 

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放射線技師法、医師法、歯科医師法、農獣医法これらはそれぞれ独立した法です。

 

医師は歯科治療ができない。

 

農獣医はヒトの治療ができない。

 

放射線技師は動物の治療ができない。

 

農獣医はヒトに放射線をあてることができない。

 

看護師もヒトに放射線をあてることができない。

 

これらはすべて無資格行為となる。

 

医師歯科医師はヒトに放射線をあてることができる。

 

(これは診療放射線技師法下で行われる)

助産師法(保助看法)と医師法(P.23)

 

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助産師法(保助看法)と医師法(P.24)

 

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同様の関係が助産師法(保助看法)で言えるか。 助産師法下で歯科医も農獣医も看護師も助産を扱うことはできないのは当然である。

 

 更に法理論からいえば医師がここで助産をあつかうのも無資格行為である。

 

医師は助産師資格がない。助産師法を満たしていない。

 

医師は助産師法ではない場所、医師法下で助産をあつかっている。

 

 医師法下の中にある医療の補助という中で行われる看護師准看護師の行為は助産師法が届かない場所にある。

各論(P.25)

 

各論「1」

 

助産師が帝王切開をしようとしたら医師が「それはならん」と言うのと、看護師が内診しようとしたら助産師が「それはならん」と言うのは同じことではないですか。

 

同様にそれぞれの立場で正義を貫こうとしているだけです。

 

各論「2」

 

医師は医師法さえ守っていれば保健師助産師看護師法を犯しても罪にならないというのか。

 

同じこの国の法ではないか、いかに医師といえどもこの国に現存する法は守らなくてはならない。

 

看護師も同じことだ。例え医師から命令されたことであろうと、それが法に反することならその命令に従ってはならない。違法なことを為せば看護師も罪をかぶることになる。

 

各論「3」

 

内診は医療の補助ではなく助産行為です 。

 

各論「4」

 

貴院では看護師に助産行為をさせていますか。

医療事故があったとき(P.26)

 

医療事故があったとき

 

民事ー>刑事  警察の捜査

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

医療事故がなくても

 

行政の調査指導

 

「貴院では看護師に助産行為をさせていますか」

攻撃に遭ったとき(P.27)

 

狼狽えず、自分を見失うことなく、対処する為に、法を整理して置く必要がある。

 

戦うのは先生方ご自身です。

各論「1」(P.28)

 

助産師が帝王切開をしようとしたら医師が「それはならん」と言うのと、看護師が内診しようとしたら助産師が「それはならん」と言うのは同じことではないですか。

 

同様にそれぞれの立場で正義を貫こうとしているだけです。

 

a 、助産師が帝王切開をしようとしたら医師が「それはならん」と言うのは、医師法 違反をしようとしているのを制御する為である。これは正当な意見。

 

b 、看護師が内診しようとしたら助産師が「それはならん」と言うのはどう受け止め るか。どの場所でそう言うのかによってその解釈が異なる。正当な意見とも言えるし、越権行為とも言える。

 

 b-1、正当な意見といえる場合:それが保健師助産師看護師法下で行われている助産であったときである。例えば助産所(ここには医師がいない)、ここでは看護師は助産行為あるいは助産の補助を行うことは許されていない。

 

 b-2、越権行為といえる場合:それが医師法下で行われている助産であったときである。ここでの助産は医療行為の1つである。医療行為となる助産の手伝いは医療の補助である。看護師は医療の補助を行うことができる職種である。医師の指示に従った看護師の医療補助行為に違法性はない。助産師は自分の在住する地域の法をもって、医師の在住する場所において医師や看護師の仕事のじゃまをする権限はない。ここは医師法下にある。

各論「2」(P.29)

 

医師は医師法さえ守っていれば保健師助産師看護師法を犯しても罪にならないというのか。

 

同じこの国の法ではないか、いかに医師といえどもこの国に現存する法は守らなくてはならない。

 

看護師も同じことだ。例え医師から命令されたことであろうと、それが法に反することならその命令に従ってはならない。違法なことを為せば看護師も罪をかぶることになる。

 

法を破ればたとえ医師であろうと罪をかぶるのは当然である。しかしこれは”保健師助産師看護師法違反”に該当しないと言っているのである。看護師も同様である。

 

助産師でなければ助産行為をしてはならないという保健師助産師看護師法30条が医師法下では通用しないのである。助産が許されている法は2つ存在する。

 

a、助産師が保健師助産師看護師法30条下で行う助産と

 

b、医師が医師法下で行う助産である。

 

この2つの法のどちらかに属していれば助産を行ってよい。2つの法のうち1つが満足されていればよいのである。

 

ここに助産師でなければ助産行為をしてはいけないという大前提がある。しかしこの保健師助産師看護師法30条を満足させていない場所での分娩も認められている。それが医師法医下という場所である。医師法を満たしていれば保健師助産師看護師法30条を満たす必要はない。

 

 医師が保健師助産師看護師法30条違反をしたというのは以下のような場合にしか適用されない。

 

@:医師が自分のうちの看護師を助産所に派遣しそこで分娩の取り扱いをさせた。ここは医師法下にない。よってこの場合、この医師、看護師は保健師助産師看護師法違反をしたと言える。

各論「3」(P.30)

 

内診は医療の補助ではなく助産行為である。

 

 Aの事象が正しければBの事象は間違っている。Bの事象が正しければAの事象は間違っている。2つの事象が同時に成り立つことはない。こういう2つの事象の関係なら、一方が間違っていることを証明する為には他の一方が正しいことを証明すればそれで足りる。

 

 例を上げれば大阪で起こった殺人事件の実行犯に自分が仕立て上げられたとする。いろんな状況証拠は揃っている。動機も充分考えられる。自分がその殺人現場にいなかった証明を大阪ですることは難しい。だがその時刻に熊本にいたことが証明できれば自分が大阪にいなかったことが証明できる。多数の人がその時刻に熊本で自分の講演を聴いていた。それで足りる。アリバイの証明というやつである。

 

 “助産行為である”ということが証明できれば“医療の補助ではない”ということが立証可能であろうか。

 

2つ同時に成り立つという事象はありうる。例えばお前は日本人だ。だからアメリカ人ではない。そうは言えない。2重国籍を持つ人もいる。2つの事象が同時に成り立つ例はいくらでもある。

 

 内診は医療の補助の補助であると内診は助産行為であるの2つの事象は同時に成り立ってよい。

 

“内診は助産行為である”ことが正しいということは“内診は医療の補助の補助でない”ということを証明するものではない。

 

上記文章は

 

“内診は助産行為でもあるし、同時に医療の補助ともなる”が正しい。

各論「4」(P.31)

貴院では看護師に助産行為をさせていますか。

 

 まず最初に確認する。 この“助産行為”という用語は保健師助産師看護師法下の助産行為を指していますか、それとも医師法下の助産行為を指していますか? a,保健師助産師看護師法下の助産行為を指しているなら うちは保健師助産師看護師法下でお産をあつかっていません。ですからこたえは“いいえ”です。 b,医師法下の助産を指しているなら 医師法下の助産は医療行為です。通常の医療機関に行って、「この医療機関では看護師に医療行為をさせていますか」と聞いているようなものだ。あなた方は他の科に行ってもそのような失礼な質問をするのか。 こたえは“いいえ”です。看護師に医療行為はさせません。 医療の補助ならさせている。 この質問に対するこたえはいずれも“いいえ”である。

法の関係図(P.32)

 

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正常分娩(P.33)

助産師のあつかう分娩(正常分娩)は医療ではないとした。

では医師は法上では助産を、特に正常分娩をあつかうことが許されているのだろうか?

これは正常分娩が医療か医療ではないかという問題になる。

正常分娩が医療なら医師があつかってよい。しかし、正常分娩が医療でないなら医師はあつかってはならない。

医師が正常分娩をあつかう為には医師は医学部を出たあと助産師学校に行って助産師免許を収得しなくてはならなくなる。法上の理屈はそうなる。

このパラドックスを解決するには、

パラドックスの解決(P.34)

◎助産師が保健師助産師看護師法下で扱う助産は医療ではない。

◎一方医師が医師法下で扱う助産は医療である。

 医師が扱えば正常分娩であっても医療とみなせる。

 これは予防医療という解釈ができる。

医師は正常に経過する分娩をそばで見守る。

異常をみつければただちに処置する。

最後まで異常が起こらなかった分娩でもそれは医療である。

保助看法第30条(P.35)

 

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保助看法第30条 助産師でない者は、第3条に規定する業をしてはならない。ただし、医師法(昭和23年法律第201号)の規定に基づいて行う場合は、この限りでない。

 もう一度昭和23年この法律が制定された時代に戻って考えてみよう。もし当時離れ小島に歯科医師しかいなくても保健師しかいなくても彼らが分娩をあつかってはいけない。国家資格の助産師免許取得者しか行ってはいけないとした。この国のほとんどの分娩はこの左の円内であつかわれた。ここは妊産婦と助産師しか入れない。ここ以外でお産をすることはこの国の法に触れる。ただ例外的にもう1っ箇所だけお産が許される場所が設けられた。右図の医師法下である。

 60年経ったいま、ほとんどの妊産婦は右図に移動してきた。それにつれて左図内にいた助産師も右図に移入してきたのである。ここには妊産婦と医師のみでなく看護師准看護師も入れる。助産師も入りここで仕事をするようになった。ほとんどの助産師達がこちらへ移動してそこで勘違いが起こった。ここでも助産師法が通用すると思ったのである。ここは保健師助産師看護師法外の地域である。保健師助産師看護師法は通用しない。ここでは助産師は看護師として医療の補助をする立場なのである。

保助看法第30条(P.36)

 厚生労働省も同様の勘違いをした。厚生労働省医政局看護科科長はその立場からしてこの左の円しか見えない。そこで保健師助産師看護師法下では助産師以外のものが助産をあつかうのは違法だとの見解をしたのである。医師法内でも助産があつかえることを見落としている。そして医師法下では助産師法が通用しないことに気づかない。まあ、彼を責めてもしようがないかもしれない。ものの半分しか目に入らない立場の人間なのだから。だからと言ってもこちらに取ってはいい迷惑なのである。もっと大きい視野でものを見る立場の人間がこの問題をあつかう必要がある。

医師 看護師 助産師の仕事(P.37)

 

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医師が行う医療行為というのは自然に逆らうものである。死にそうな人を生き返らせる。死んで産まれてくるものを生きて産ませる。病気を治す。それだけに危険を伴い、ミスが起こると生きるものも死ぬ。

看護師が行う看護は自然に沿ったものである。保温、栄養、身の清潔を保つ。それら看護計画には医師は介入しない。彼ら独自で行うのである。

助産師が行う助産も自然な営みへの補助である。生きて産まれるものは生き。死んで産まれるものも自然にまかせる。法的にここには医療は存在しないのだから死産があっても助産師にその法的責任を取ることをさせてはならない。助産師が医療を為すと見てはいけないのである。

ただ看護師も助産師も医療に参加する場合もある。このときは看護師として医療の補助を為すのである。

確認(P.38)

看護師准看護師は医療の補助を行う資格を持っている。

医師法下にある医師の指示のもとに行う内診は医療の補助とみなすことができる。

准看護師が内診を行うのに違法性はない。

彼女達は有資格者である。

結語(P.39)

違法でないことは証明できた。

ならばあとはその人間をトレーニングし、充分な技量知識を持たせればいいだけの話である。

それは新米の医局員に研修を積ませ、難しい手術をこなせていけるようにすることと何の違いもない。

分娩における医師、助産師、看護師の役割分担と連携等について(P.40)

 

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単純明快なことなのです。 (P.41)

我々が行っているのは医療である。

助産師が行っているのは医療ではない。

我々が看護師にやらせているのは医療の補助である。

単純明快なことなのです。

                                 著    者   八 木 謙

                                 発行者   八 木 謙

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