表 紙(P.1)

image08

はじめに (P.2)

 はじめに  私ももう71歳になった。いつまで生きるか分からない。そして頭が正常なうちにあの事件を書き残して置こうと思う。これはある産婦人科医と私とのメールのやりとりの記録である。

第1章 発端 5,16,20(P.3)

1、 院内助産について お知恵をお貸しください     X先生からY(八木)へ

From: OOO

Sent: Monday, May 16, 2016 8:38 PM

To: yagi-k@beige.plala.or.jp

Subject: 院内助産について お知恵をお貸しください

私はOO県産婦人科医会の参与をしております。いつも産婦人科のMLで先生の理論をよませていただき納得させられています。この際先生のお考えお教えを教えていただきたくメールを差し上げます。申し訳ありません。

私一人の力では難しいので先生のお知恵、知識を貸しください。

一昨日、OO県で産婦人科会がありました。この席で現在OO大学医学部産婦人科で院内助産をすすめており県内に院内助産を進める予定であること。また他病院よOO大学で院内助産の研修をするシステムがあるので参加するようにとの報告がありました。OO大学教授OO先生に院内助産とはどの程度を考えているか伺ったところ、正常分娩の会陰切開、局所麻酔、会陰縫合を考えているとのことでした。これに対して、前記の行為は医療行為であり医療法違反ではないかと私が申し上げたところ、一切無視され全く黙殺されているところです。

以前平成25年2月1日に、日本産婦人科医会医療政策部会より「院内助産における助産師の業務範囲の留意点について」の文書がでており、前述の行為は日本産婦人科医会としては当然ながら認められないと思われます。この文書を昨日、教授にコピーしてお渡ししましたが黙殺されております。範を示すべきの国立大学において、日本産婦人科医会の通達を無視して前述の行為を進めていては組織として成り立たちません。

またOO県のOO産婦人科連合会会長OO先生が自ら通達を黙殺すると言う事は、日本産婦人科医会で規則を定めても会員は無視して良いという道理になります。 看護師、助産師に医療行為をさせると言う事は産婦人科医師の居場所がなくなりますます産婦人科医の減少につながると考えます。皆に頼られて医師としての経験と自覚と誇りが生まれるというものです。また看護師、助産師に医療行為が認めればますます男性医師の立場がなくなり男性産婦人科医の減少につながると考えられます。さらに他の科にも影響が広がり、会陰部なら前述の行為が認められ、切創などの処置は認められないというのは矛盾してくるようになります。

OO大学では教授が全国に先駆けて院内助産を進めていこうとしています。私としてこれに対して、OO大学で行う院内助産は医療行為であり、本会の通達に反しない範囲で行うべきと考えます。私は場末の医師でOO県産婦人科のトップの先生に意見を言っても伝わらず苦慮しています。良い方法がありましたらお教えください。県からも講座開設の予算の計画がすでに進んでおり至急の対応が望まれます。私がどのように行動して良いかいい方法がわかりませんので、不躾ながらメールさせていただきました。

いつでも電話でも結構ですので理論武装等お力をお貸しねがえないでしょうか。すでに日本産婦人科医会の医療政策部の担当には相談しております。

電話 000-000-0000(今でも夜でもかまいません)

OO市00-0000

産科婦人科OO医院

OO O

第2章 返事 5,17,9(P.4)

2、返事 5,17,9

From: 八木 謙

Sent: Tuesday, May 17, 2016 9:58 AM

To: OO

Subject: Re: 院内助産について お知恵をお貸しください

OO 先生

八木です。

先生のメール拝見しました。

私のホームページの

https://www.yagiclinic.jp/koume/htm/modules/bulletin/index.phppage=article&storyid=14

[2009-5-2] 院内助産所に対する法的見解

[2013-1-7] 助産師法と医師法の狭間ででこの問題を論じています。

その中で大学病院で教授が、

ⅰ 医局員に命じて行わせるのは医療である。

ⅱ 看護師に命じて行わせるのは医療の補助である。

ⅲ では助産師に命じて行わせる業はどの分類に入るか。

①助産師に行わせるのも医療である。

②助産師に行わせるのは医療の補助である。

③助産師に行わせるのは医療でもなく、医療の補助でもない。

①は法的に理論的説明がつけられない。医師免許がないものに医療行為を行わせることはできない。

②は可能である。"医療の補助"の枠を"医療行為"に近寄らせるとすることで解決できる。

③が問題である。医療でもなく、医療の補助でもないというものが存在するか。

存在する。保助看法下で行われる助産行為がそれに該当する。これは医療ではない。

だが、"③医療でもなく、医療の補助でもない業務"となるとそれを教授が命ずるという事自体に法的矛盾が起こる。正にその場所が院内助産所である。例えそれが病院内で行なわれたとしてもそれは教授の管轄外だ。

という箇所が理論的な核になるのではないかと思います。

OO大学の件についてはもう一度よく検討してみて何かいい知恵が浮かぶか考えてみます。

しばらくお待ち下さい。

結局、医師法下にある医療機関の中で医師法が通用しない院内助産所という場所は法的に存在するのか。

医療機関というドーナツ型の枠の内空に医師法が通用しない場所があるとすれば、そこは教授の権限が届かない。そこでは全責任の所在は助産師となる。

一般の開業医の助産師にこの考え方を吹き込まれては迷惑至極、なんとかしなくてはなりません。

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742-0322

山口県岩国市玖珂町829-1

八木クリニック

八木 謙 yagi-k@beige.plala.or.jp

℡ 0827-82-1212

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医療ガバナンス学会 (2009年5月2日 11:53)に掲載

臨時 vol 101 「院内助産所に対する法的見解」

 八木 謙 

厚生労働省は平成二十年四月一日より補助金を交付し「院内助産所・助産師外来施設・設備整備事業」の推進を行なっている。院内助産所とは医師が常駐せず、助産師が自らの責任の下に正常な妊娠・分娩を扱う場所である。もちろん異常が起これば病院内にある産科医療施設へ患者を移動する事になっている。平成十四年十一月十四日と平成十六年九月十三日、厚生労働省は助産師のいない産科開業医施設での看護師の内診が保健師助産師看護師法(以下保助看法)違反という見解を示した。それを受けて警察は違反したとする産科開業医の検挙を行なった。その結果、助産師が雇用できない産科開業医は次々と分娩の取り扱いを止めていった。更に平成十九年三月三十日に同省は「看護師は医師又は助産師の指示監督の下診療又は助産の補助を担う」という見解を通知し、看護師と助産師の位置付けを行なった。続いて今回のこの事業である。医療費を可能な限り抑えようとするこの国の方向性が見て取れる。異常のない分娩は医療から切り離す。しかし抑えながら医療の質は落としたくない。ならば切り離しはしたが助産所を医療施設内に置く形式にすれば両方の利点を活かせる。

 だが盲点はないだろうか。懸念されるのはこの助産行為が医療から切り離される為、医師の監視下に置かれなくなり分娩監視の法的責任が助産師の手に委ねられる事である。助産師に対する法的な医療管理体制はどうなるか。すでに大学病院でも院内助産所、助産師外来を取り入れているところもある。そうした大学病院を例にとって考えてみよう。教授の責任という立場から見てみる。

大学病院で教授が、

1 医局員に命じて行わせるのは医療である。

2 看護師に命じて行わせるのは医療の補助である。

3 では助産師に命じて行わせる業はどの分類に入るか。

 (1)助産師に行わせるのも医療である。

 (2)助産師に行わせるのは医療の補助である。

 (3)助産師に行わせるのは医療でもなく、医療の補助でもない。

 (1)は法的に理論的説明がつけられない。医師免許がないものに医療行為を行わせることはできない。

 (2)は可能である。”医療の補助”の枠を”医療行為”に近寄らせるとすることで解決できる。

 (3)が問題である。医療でもなく、医療の補助でもないというものが存在するか。存在する。保助看法下で行われる助産行為がそれに該当する。これは医療ではない。だが、”(3)医療でもなく、医療の補助でもない業務”となるとそれを教授が命ずるという事自体に法的矛盾が起こる。正にその場所が院内助産所である。例えそれが病院内で行なわれたとしてもそれは教授の管轄外だ。一般病院でも同じ事が言えるだろう。

 助産所では、「先生、これは正常分娩ですから、医師は口を出さないで下さい。助産師の責任下で行います」と言う事が罷り通る。困ったことにこれは法的に正当な主張なのである。

 カエサルのものはカエサルに返せという聖書の言葉どおり、この業は助産師に返すか。世間が望むならそれも良い。だが病院内でのお産を完全に医療と切り離すことが可能であろうか。血管確保1つにしてもそれは医療である。超音波診断もしかり。残る解決方法は、(1)助産師に行わせるのも医療である、とする法の拡大解釈である。法を現実社会に適合できるよう柔軟に解釈することもときには必要であろう。だが平成十四年、平成十六、産科開業医が看護師相手に行なってきた産科医療が違法だと、法を厳格に適用し産科開業医を弾圧してきたのは厚生労働省の方である。その厚生労働省が今度は法を拡大解釈しようとする。話を進める前に産科開業医が犯したとする保助看法違反をもう一度検証してみる。

まず法を見る。

1、医師法第十七条 医師でなければ、医業をなしてはならない。

2、保健師助産師看護師法第三条 この法律において「助産師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、助産又は妊婦、じょく婦若しくは新生児の保健指導を行うことを業とする女子をいう。

第五条 この法律において「看護師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、傷病者若しくはじよく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする者をいう。

第六条 この法律において「准看護師」とは、都道府県知事の免許を受けて、医師、歯科医師または看護師の指示を受けて、前条に規定することを行うことを業 とする者をいう。

第三十条 助産師でない者は、第三条に規定する業をしてはならない。ただし、医師法の規定に基づいて行う場合は、この限りでない。

第三十一条 看護師でない者は、第五条に規定する業をしてはならない。ただし、医師法又は歯科医師法の規定に基づいて行う場合は、この限りでない。

二、保健師及び助産師は、前項の規定にかかわらず、第五条に規定する業を行うことができる。

第三十二条 准看護師でない者は、第六条に規定する業をしてはならない。ただし、医師法又は歯科医師法の規定に基づいて行う場合は、この限りでない。

 三条と三十条は対になって助産師の業を規定している。五条と三十一条は看護師のそれを、六条と三十二条は准看護師のそれを表すものである。更に三十一条においては助産師に看護師の業を為すことが出来ると定めている。

 これから得られる各業種の業務分担は、看護師は自らの判断で行う看護と医師の指示の基で行う医療の補助を行う事ができる。准看護師は看護と医療の補助を行うことができるが、看護については自らの判断で行うものではない。助産師は助産と看護と医療の補助を行う事ができる、となる。

 業務分担

  医師    医療

 准看護師   医療の補助  看護

 看護師    医療の補助  看護

 助産師    医療の補助  看護  助産

 医師は医師法下で助産(正常分娩も)を扱う。助産師は保助看法下で助産を扱う。両者の立脚する法律が異なる。医師法に縛られない、医療として扱われない助産行為が法的に存在する。同様に保助看法に縛られない、医療として扱われる助産も存在する。医療として扱われた助産に保助看法は介入出来ない。それは医療として扱われなかった助産に医師法が介入しないのと同様である。(日本医事新報平成十八年十月十四日号「看護師の内診は違法か」より引用)

 よって医療機関内、医師法下で行われた助産に対しこの保助看法違反は成立しない。またこの法構図を見る限り平成十九年三月三十日の厚生労働省通知「看護 師は助産師の指示監督の下に助産の補助を担う」という法解釈が間違いであることが分かる。看護師の業務に保助看法下の助産の補助はない。あるのは医療の補助である。

 厚生労働省が平成十四年、十六年と渡って通知を出し、産科開業医から分娩を取り上げる法的意義は無かったのである。 さて今回のこの院内助産所は医師法の通じない場所であるから、ここでの業務に医師は介入できない。助産師の判断がここでの最高意志決定となる。従来の医療の観点から見れば異例の抜擢である。薬剤師が薬を出すには医師の処方箋が要る。放射線技師も医師の指示の下でなければ患者の体に放射線を当てることが出来ない。検査室も同様である。これらすべて法で定まっている。従来の産科医療機関であれば助産師も医師の指示の下で動かなければならなかった。だが今回のこの院内助産所ではこのヒエラルキーが断ち切れる。また患者を院内助産所から病院側に移動する判断も助産師に任せることになる。つまりこの施設においては帝王切開の決定をするのが医師ではなく助産師という事になるのである。

 このままこの院内助産所が進化すれば将来次のような助産施設も生まれてくるだろう。それは助産院内産婦人科とでも言おうか。つまりカリスマ助産師の経営 する助産所で多数の助産師が働く。その一角に産婦人科医療機関が置かれる。医師はそのカリスマ助産師に雇われた者である。助産師より帝王切開の指示が出れば医師はそれを行なう。ここでは始めから分かっている異常分娩は扱わない。それは総合病院に行ってくれ。ここは健康な妊婦さんがお産をする場所ですと嘯いていればいい。ここでは助産師が扱う正常分娩部門と産婦人科医が扱う帝王切開部門では圧倒的に正常分娩部門の量の方が多い。市場原理主義社会の世の中では多く稼いでいる方の発言力が増すのは当然となる。

 庶民には受けるだろう。”健康な妊婦がお産する場所”というキャッチフレーズは妊産婦の耳には心地よく、これがテレビに流れれば民衆は飛び付く。マスコミは怪物を生み出すものである。こうした怪物の台頭を許してはならない。だが院内助産所を国が推進している以上、法的にこうした助産所も認めざるを得なくなる。  産婦人科医不足を院内助産所という姑息的手段で解決しようとすると必ず弊害が起こるであろう。現行法での助産師の業務規定は助産師が医療機関内で業務を行うことを想定していない。想定しているのは医師がいない場所で、医療とは別枠で扱う助産なのである。医療機関内で働く場合には薬剤師や放射線技師と同様に”助産師は医師の指示の下で助産を扱う”といった成文が本来ならなくてはならなかった。

 我々が求めている助産師とは産科医師の助手をする者である。産科医の下で常に技術を修練し産科医療の助けをしてくれる優秀な人材である。医 師のいない場所でお産を扱える法的資格は有っても無くてもそれは大した意味を持たない。助産師が名称独占であり、その呼び名が使えなければ、”産科医療助 手認定看護師”とでも言えばいい。それは産婦人科学会又は医会あるいは周産期・新生児学会が教育しその認定をすればいいのである。

 妊婦検診は助産師外来でなくとも看護師外来であっていい。この認定看護師が超音波等医療検査機械を扱い検診を行なう。患者の希望があれば三十分でも相談 に乗って上げればいいのだ。検診の最後に医師がそのデーターに目を通しサインをすればそれで法的にも医学的にも問題はない。こうした優秀な認定看護師の育成に力を注ぐべきなのである。

 産科病棟の長は看護大学卒で、NICUや手術室勤務も経験してきた優秀な認定看護師をその師長とし、廻りのコメディカルスタッフを束ねるようにする。それでここは医師を頂点とするピラミッド型の指揮系統に統一される。

 この体制は先般、厚生労働省が潰しにかかった産科開業医の形式である。意味のない法解釈によってもたらされた不幸を真摯に受け止め、この国の産科医療形態の構築を図っていかなくてはならない。

 忘れてならないのは「医師以外の者に一部の医療を行わせる事によって得られるメリットは医師以外の者の医療行為を禁じた事によってもたらせる福音を上回るものではない」という事実である。

第3章 X先生からYへ 5,17,11(P.5)

3、Re: 院内助産について お知恵をお貸しください X先生からYへ 5,17,11

From: OO

Sent: Tuesday, May 17, 2016 11:19 AM

To: 八木 謙

Subject: Re: Re: 院内助産について お知恵をお貸しください

返事をいただきましてありがとうございます。

ポイントとしては医師法下にある医療機関の中で医師法が通用しない院内助産所という場所は法的に存在するのかということですが、助産師が行う会陰切開、局所麻酔の注射、会陰縫合が助産師に許される行為かどうかが不明確で困っています。厚労省の見解は部署で分かれているようです。助産師が行う会陰切開、局所麻酔の注射、会陰縫合が医療行為であるかないかの判断はどのように論破したら良いでしょう。この点で意見が違い困っております。先生のお考えをお知らせ下さい。

第4章 YからX先生へ 5,17,16(P.6)

4、YからX先生へ 5,17,16

From: 八木 謙

Sent: Tuesday, May 17, 2016 4:41 PM

To: OO

Subject: Re: 院内助産について お知恵をお貸しください

OO先生

八木です。

まず、医師が関与しない分娩、つまり開業助産師が助産所で行う分娩について。

会陰切開、局所麻酔、会陰縫合は違法です。

助産師法下で助産師に許されているのは臍帯の切断のみです。

保健師助産師看護師法

第三十七条 保健師、助産師、看護師又は准看護師は、主治の医師又は歯科医師の指示があつた場合を除くほか、診療機械を使用し、医薬品を授与し、医薬品について指示をしその他医師又は歯科医師が行うのでなければ衛生上危害を生ずるおそれのある行為をしてはならない。ただし、臨時応急の手当をし、又は助産師がへその緒を切り、浣腸を施しその他助産師の業務に当然に付随する行為をする場合は、この限りでない。

麻酔剤の使用を開業助産所で行えば医師法違反です。会陰切開、縫合も同様。(麻酔剤は入手できないし)

これについては厚生労働省も教授も反論できないでしょう。もし反論するのであれば保助看法第三十七条を表に出せばいい。

Ⅰ、「助産師単独で会陰切開、局所麻酔、会陰縫合を行う事は違法」

これだけは言えます。

Ⅱ、「では院内助産所で助産師がこれを行う事は違法か合法か」

ここが問題です。違法と言える場合もあるし違法と言えない場合もある。

結局、院内助産所を医師法下に置くのか助産師法下に置くのかという問題に尽きます。

(医師法下に置いて医師の指示の基、医療の補助としてこれらの行為を行うなら合法である)

<<<医師の監督下なら>>>

理論的にはこれでいいと思います。

で、現状打開の具体的案を模索していますので、少々お待ちください。

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第5章 X先生からY へ 5,17,17(P.7)

5、 X先生からYへ 5,17,17

From: OO

Sent: Tuesday, May 17, 2016 5:08 PM

To: 八木 謙

Subject: Re: Re: 院内助産について お知恵をお貸しください

いろいろありがとうございます。全国的な傾向を知るために私の母校(OO大)の周産期の責任者に聞いたところ、大学病院で院内助産所を設置しているところはおそらくないだろうとの事でした。また常識的に考えて産婦人科医会の通知を無視して医療を行うことは普通考えられないとのことです。東大も同様のようです。

日本産婦人科医会の考えは会陰切開、縫合、局所麻酔は明らかに違法だが、完全に否定すると現在助産師が前記の行為を行っている小規模の産婦人科施設があり、完璧に禁止した場合零細産婦人科への影響が大きいので難しいところだ、大学病院等の施設での実施は全く想定していない、また院内助産制度自体に対して反対のスタンスである。しばらく猶予をくださいとの連絡でした。

この点について教えてください。先生のおっしゃるのは、脇に医師が立っていてその指示で助産師が縫合するのは合法ではないか、医師が不在時で縫合するのは違法との事のように思いますが、このように理解してよろしいでしょうか。今は県の予算の係の人と法行為に助成金を出すのは問題であるとの方向で話しています。

>Ⅱ、「では院内助産所で助産師がこれを行う事は違法か合法か」ここが問題です。違法と言える場合もあるし違法と言えない場合もある。結局、院内助産所を医師法下に置くのか助産師法下に置くのかという問題に尽きます。

>

>(医師法下に置いて医師の指示の基、医療の補助としてこれらの行為を行うなら合法である)

><<<医師の監督下なら>>>

第6章 YからX先生へ 5,18,11(P.8)

6、YからX先生へ 5,18,11

From: 八木 謙

Sent: Wednesday, May 18, 2016 11:45 AM

To: OO

Subject: OO大学OO教授への質問状

OO先生

八木です。

OO教授にしてみれば院内助産所は厚生労働省も推し進めている事だし国立大学教授としてこの計画を推進した第一人者となればお手柄だという思いもあるでしょう。正常分娩など助産師に任せておけばいい。この場所は院内に在るのだから何かあれば医者はすぐ駆けつけられる。当直医は正常分娩に立ち会う必要はない。それより医局員にはもっとやって欲しいことが沢山あるのだ。県内の他病院にもこのすばらしい計画を推し進めよう。

正常分娩は助産師に、異常分娩は医師が、と分業し一見合理的に見えます。

しかし日本の周産期医療が世界一の水準になったのはこの正常分娩という底辺全部を医師が担ったに他なりません。これを逆行させてはならない。

OO教授の意図は助産師にある程度の医療(会陰切開、局所麻酔の注射、会陰縫合)をさせて医師を正常分娩から解放するということにある。自分が訓練した助産師だから自信を持って推薦できる。県内の他の助産師もここで訓練してあげますと。

この考え方分からない訳でもないのですが、学者の独りよがりな考え方で、開業医にとってはとんだ迷惑です。

OO先生の「助産師の会陰切開、局所麻酔の注射、会陰縫合は医師法違反ではないか」という質問に平然としていられるのは教授は違法ではないという確信があるからです。

その確信とは、確かに開業助産師ならこれは違法になるだろう、しかしここは院内助産所なのだ、ここは医師法下にある。医師法下では医師の包括的指示のもと助産師は限られた医療行為をすることができる。それは法的には医療の補助と看做される。

つまり、同じ敷地内に当直の医師がいて夜勤の助産師に正常分娩なら会陰切開、局所麻酔の注射、会陰縫合をしなさいとい指示を出しておいたという形式にしておく。これなら合法である。医師はその場に立ち会わなくても医療の補助は行うことができる。

こうした指示は一般的に行われている。血圧がいくらまで下がったらこの昇圧剤をうて、とか術後痛みをうったえればこの注射をうて、とかは前もって指示しておいていちいち当直の医師を起こさないで行っているだろう。それと同じだ。

この理論を打ち砕く作業をしてみます。

院内助産所に対する教授の眼目は助産師だけで正常分娩を扱い医師をその場に置かないことにある。

しかしその場合、そこで医療行為が行われたならばそれは違法である。それを証明してみます。

繰り返しになりますが院内助産所は医師法下にあるのか助産師法下にあるのかが問題です。逆にいえばここが曖昧であることがむこうの狙いです。

出生証明書を見てみますと証明欄は

1、医師

2、助産師

3、その他

となっており、医師、助産師がともに立ち会った場合は医師が書くとなっています。

つまり1、医師の名で書かれた出生証明書は医師法下における分娩だった。

2、助産師の名で書かれた出生証明書は助産師法下における分娩だった。

出生証明書がこの分娩がどちらの法の基で行われたかを証明します。

もし医師の名でこの出生証明書が発行されていれば、医師は出産に立ち会わずに出生証明書を書いたとして医師法20条違反になる。

もし助産師の名でこの出生証明書が発行されていれば、これは助産師法下で行われた分娩であり、そこで会陰切開、局所麻酔の注射、会陰縫合等の医療行為が行われていれば医師法17条違反になる。

出生証明書の発行が医師であっても助産師であってもどちらも違法です。

ここまで理論武装した上で具体的な攻撃に移りましょう。

―――――――――――――――――――――――――――――――――

OO大学OO教授への質問状:

①単独で助産院を開業している助産師にも会陰切開、局所麻酔の注射、会陰縫合はありと言われるか。

それは保健師助産師看護師法第三十七条に抵触し医師法違反となると思うが。

院内助産所に限ってそれは許されると考えられるなら、更に質問がある。

院内助産所での医師が立ち会わない分娩で、

②出生届けは当日の当直医の名前をで発行するのか。

③それとも実際に取り上げた助産師の名前で発行するのか。

②の立ち会っていない当直医の名前で出生届を発行すれば医師法20条違反にならないか。

③の助産師の名で出生届けを出せばこれは助産師法下で行われた分娩である。この分娩が医師法下にないならそこで助産師が行った会陰切開、局所麻酔の注射、会陰縫合は医師法17条に抵触しないか。

――――――――――――――――――――――――――――――

以上を教授に送り付け、同時に県へも提出しこの企画は違法であるとすればいいでしょう。

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第7章 X先生からYへ 5,18,15(P.9)

7、X先生からYへ 5,18,15

From: OO

Sent: Wednesday, May 18, 2016 3:10 PM

To: 八木 謙

Subject: Re: OO大学OO教授への質問状

大変参考になります。県には質問状をだしました。OO大学には出そうと思いましたが、通常の手紙、メールで質問しても無視されると考えられますので、県のみにしました。遅かれ早かれOO大学に同じ文書が行くと思います。大変ありがとうございます。今のところ私一人で戦っているので大変です。少々疲れてきています。日本産婦人科医会から電話も1昨日あり、見解を出すのにしばらくかかるので猶予をくださいとのことでした。また先生のご助力をお願いします。

第8章 X先生からYへ 5,18,18(P.10)

8、X先生からYへ 5,18,18

From: OO

Sent: Wednesday, May 18, 2016 6:27 PM

To: 八木 謙

Subject: Re: OO大学OO教授への質問状

いろいろとご協力いただきまして深謝申し上げます。

その後教授にも同様の質問のメールを送りました。いろいろお知恵を拝借しています。

院内助産を全部否定するのも法律上は簡単でも実際は大変ですね。他院での話を聞くと院内助産がうまくいっているところはほとんどないそうです。三井記念も今は止めているように聞きますし、以前の京都大学小西教授が退官後院長になった病院(名前は失念)でも院内助産はうまく機能しなかったと聞きました。しかしながら国立大学で県から補助金で講座を作って院内助産を県下に推進するという暴挙は止めてほしいと思います。非国立大の民間病院等で試行錯誤して行うならまだわかりますが。そのうち大学から何か当方に報復があるかもしれないと思っています。官僚等はそういうものですから。

またご協力をいただければ幸いです。

OO市OO―OO

産科婦人科OO医院

OO O

第9章 YからX先生へ 5,19,10(P.11)

 

9、YからX先生へ 5,19,10

From: 八木 謙

Sent: Thursday, May 19, 2016 10:09 AM

To: OO

Subject: Re: OO大学OO教授への質問状

OO先生

頑張って下さい。

何時でも協力は惜しみませんので。

等県でも県立中央病院は院内助産所を持っています。

医長に「そこは医師法下にあるのかそれとも助産師法下にあるのか」と質問したことがあります。

医長の返事は「そこは医師法下にある、すべて私の責任下にある」ということでした。

それならいいだろうと思いました。

今回 、OO先生への回答で色々考えているうちに出生証明書は誰の名前で発行しているのかは非常に重要な問題だと気付きました。

もし、医師を立ち会わせないで医師の名で出生証明書を発行しているなら医師法違反です。

院内助産所が抱えている問題は次の2点だと考えています。

1、助産師は医師の管理下にいない。両者は法的に互いに独立している。

医長が「すべて私の責任下にある」というのは法的に矛盾しているということです。

医長がそう言うためには医療機関内の助産師は医療の補助をする看護師という存在でなくてはならない。

2、医師以外のものに医療行為を許す弊害はそのメリットより計り知れず多い。

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742-0322

山口県岩国市玖珂町829-1

八木クリニック

八木 謙 yagi-k@beige.plala.or.jp

℡ 0827-82-1212

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第10章 X先生からYへ 5,19,17(P.12)

10、 X先生よりYへ5,19,17

From: OO

Sent: Thursday, May 19, 2016 5:12 PM

To: 八木 謙

Subject: Re: Re:

いろいろありがとうございます。日本産婦人科学会の立場から意見として何か妙案はないかとおもいまして、XX大の教授(私の後輩)にコンタクトを取っているところです。電話がくることになっています。

現在、OO教授は厚労省に問い合わせているところと言っています。返答の期日を教えるように言っていますが、返事を黙殺されて実行に移されるような気がします。その対策も考えていますが、県に予算執行の停止を求める訴訟も弁護士等大変だと考えているところです。

第11章 X先生からYへ 5,19,22(P.13)

11、 X先生よりYへ 5,19,22

From: OO

Sent: Thursday, May 19, 2016 10:44 PM

To: 八木 謙

Subject: Re: Re: OO大学OO教授への質問状

OO大学OO先生からは厚労省に問い会わせ中です、との事で無視されそうです。無視しておいて事業を進めるつもりでしょう。彼の答えを引き出し窮地に追う良い方法は無いでしょうか。妙案はないでしょうか。先生の診断書の件は妙案です。

第12章 YからX先生へ 5,19,22(P.14)

12、 YからX先生へ 5,19,22:53

From: 八木 謙

Sent: Thursday, May 19, 2016 10:53 PM

To: OO

Subject: Re:

OO先生

頑張っていらっしゃいますね。

県に対して裁判を起こすよりも道理を説いて説き伏せる方が得策かと。

大学が薦めていても県の産婦人科医会が挙って反対している事が分かれば県は手を引くのではないでしょうか。

OO教授を説き伏せるのは困難でしょう。一応質問状を送ったという事実だけあればいいと思います。

県に対してOO先生名あるいは県産婦人科医会会長名で意見書を提出したらどうでしょう。

案を作ってみました。ご参考に。

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山口県岩国市玖珂町829-1

八木クリニック

八木 謙 yagi-k@beige.plala.or.jp

℡ 0827-82-1212

(私の文章は転記可)

以下

県への意見書

意見書

(○○県で院内助産所を推進する為の補助金出資についての意見書)

                  平成28年○月○日

 ○○県産婦人科医会 ○○ ○○

 ○○県○○係り御中

  御県で院内助産所を推進する為の補助金を検討されているとの話を耳にしました。○○県産婦人科医会としましてはこの企画に全面的に反対の意を表明致します。

 院内助産所は正常分娩を助産師に任せ、異常のあるもののみを医師が取り扱うという合理性を目指しているものです。病院内に助産師のみが在中する助産所を設置し正常分娩は医師は立ち会わない。通常の会陰切開、局所麻酔、会陰縫合は訓練を受けた助産師が行う。異常が起これば助産所に医師が駆けつけるか病院の方へ患者を搬送する。これで問題ない。

 これで医療水準が保てるか否かの問題はさて置いて、法的問題について吟味してみたいと思います。

 医師は医師法下で分娩を取り扱い、助産師は助産師法下で分娩を取り扱います。助産師は医療行為を行うことはできません。では院内助産所は医師法下にあるのか医師法下にないのか。ここは病院の一部だから医師法下にあると言えるという考え方とここは病院内にはあるが医師法下にはないここは助産師法で運営されている空間だという二種類の解釈ができます。この二種の峻別が曖昧にされ混ざり合って、ここは助産師法下にあるのだから助産師単独で分娩を取り扱うことができ、かつまた医師法下ともいえるのだから会陰切開、局所麻酔、会陰縫合という医療行為はこの場所でできる。この医療行為はこの病院の当直医師の委託で行っているのだから法的に問題はない。結局医師法下にないということ、と医師法下にあるということ、の両方のいいとこ取りをしている。欺瞞的な法解釈です。

 ここで取り扱われた分娩が医師法下で行われたものであったか、助産師法下で行われたものであったかを見分けるのは提出された出生証明書です。

① もし、当直医の名で出生証明書が提出されていれば、

医師法第20条 医師は、自ら診察しないで治療をし、若しくは診断書若しくは処方せんを交付し、自ら出産に立ち会わないで出生証明書若しくは死産証書を交付し、又は自ら検案をしないで検案書を交付してはならない。

に抵触します。

② もし、実際に取り上げた助産師の名で出されていればこれは助産師法下で行われた業であり、そこで会陰切開、局所麻酔、会陰縫合の医療行為が行われていれば違法です。分娩室に入って血管確保をしただけでも違法です。

やはり、お産は医師が立ち会うという従来の様式にしたのがいいのです。

院内助産所は上記のように法的問題を内蔵しています。大学で実験的に行っていることに文句は言いませんが、一般の医療施設に薦めるようなものではありません。

第13章 X先生からYへ 5,20,1 (P.15)

13、 X先生からYへ 5,20,1

From: OO

Sent: Friday, May 20, 2016 1:11 AM

To: 八木 謙

Subject: Re: Re:

今分娩が終わったところです。心音が急に下がって本当に死んでしまうかと思うくらい

焦りました。帝王切開の用意をしている間に急に分娩が進み、経膣で産まれました。この世界は疲れます。

重ね重ねありがとうございます。他の県は知りませんがOO県はOO教授=産婦人科医会ですので・・・・。産婦人科医会の会合ではOO県産婦人会会長の横に教授が座り、司会が会長、意見を言うのは教授です。役員のほとんどがOO大学医局関係者で他の大学の医師は私も含めて3-4人です。誰も教授に異議を挟む人は居ません。医局員で教授に意見を言うと大学から外に出されるという話です。殴られた医局員も居るそうで、私も教授に意見をしたら暴言を吐かれましたが、医局員にそう話しても皆不思議にも思いません。逆に医局員がスイマセンと謝ってくれます(爆笑)。

先生の意見書はすばらしいので個人名でも県に出すかしれません。平成25年2月に日本産婦人科医会の通達文を出した名義人が今の日本医師会の副会長なのでSOSを当方から出しています。電話が来ているので多分検討はしてくれているとは思いますが、昨日も援軍要請をだしておきました。

いつも赤の他人の私にお力を添えていただきありがとうございます。

第14章 X先生からYへ 5,20,18(P.16)

14、 X先生からYへ 5,20,18

From: OO

Sent: Friday, May 20, 2016 6:37 PM

To: 八木 謙

Subject: Re: Re:

とりあえ下記のメールをいただきました。ご報告申し上げます。後は産婦人科学会から勧告してくれるようにお願いをする予定です。来週勝負かもしれません。来週は県の衛生部長が当院に来て事情を聞いてくれるようです。また何か妙案がありましたらおおしえください。いつも助けていただいて心強く思っています。

“いつもお世話になっております。日本産婦人科医会事務局長OOです。

先生からのメールやお電話の件につきましては、木下会長等にもお伝えし、ご相 談しております。

この件につきましては、来週24日火曜日に運営打合せ会がセットされておりますので、その時の議題としてお集まりの先生方でご検討いただくことにしておりま す。お急ぎのこととは思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。"

第15章 YからX先生へ 5,23,8 (P.17)

15、YからX先生へ 5,23,8

From: 八木 謙

Sent: Monday, May 23, 2016 8:26 AM

To: OO

Subject: 代診

OO先生

八木です。

県の衛生部長と話し合いが開かれるとのこと。

私の提案「出生証明書の発行者が医師であたか助産師だったか」で矛盾を追及できる。ということについて、あるいはこういう反論がでるのかもしれません。

「自ら立ち会わないで出生証明書を書いてはいけない」と法律上はなっている。現実はアルバイトの当直医が立ち会ったお産を翌日院長名で出生証明書を書いているではないか。これらはすべて違法だ。

これは代診という考え方を採用すればいいと思います。

私の診療所も保険所が許可を出している。これは私が診療するということで許可を出しているのですが、海外旅行に行くとき代診の医師を置いておけば問題ない。

医師が代診することは違法ではない。

代診の医師の診療内容の診断書や証明書を後日院長名で出すことは可能である。代診の医師は私の代行をしたのだ。

助産師が医師の代理が出来ると考えたのは厚生労働省の誤算です。

8年前産婦人科医会MLにこんな投稿をしていました。

この企画は双方のいいとこ取りをしているということは気が付いていたのですが違法性を証明できなかった。

出生証明書の発行者はが誰かということで今度は証明できます。

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8年前日本産婦人科医会MLに投稿

From: 八木 謙

Sent: Tuesday, May 13, 2008 4:54 PM

To: jaogall@jaog.or.jp

Subject: 院内助産所・助産師外来開設促進事業

山口県・八木です。

 厚生労働省は3月31日付けで「院内助産所・助産師外来開設促進事業」を推進、4月1日から適用するよう都道府県知事に通知した。年間予算25,407千円:というのを今日知った。

http://www.wic-net.com/search/search798-3.html

 このまま傍観していてよいものだろうか・・・

やりたい人はやればいいと思っていたが、厚生労働省が肩入れすることになると国家規模の事業になる。この国の将来の産科医療はこの方向へ邁進して行っていいのだろうか?

 懸念されるのはこの場所は、果たして医師法下にあるのだろうかということである。法的にどういう位置づけにあるのかが明確にされていない。医師の管理下にあるのか?医師の管理下に置かれてないのか?

 従来の医療機関であれば医師がその分娩の責任者で、助産師、看護師はその指揮下にある。ここでは助産師であっても医師の命令には逆らえない立場にある。これは医師法下で取り扱う分娩だからだ。

 しかし今回新しく出来た「院内助産所・助産師外来開」はその意味合いから言えば助産師が保健師助産師看護師法下で助産師自身の判断で検診分娩を取り扱うものと執れる。

 具体的に言うと、もし助産師が「これは正常分娩ですから、先生は口を出さないで下さい」と言えば、医師は介入出来ない。現実問題として困るのはこれが法的に正しい主張だからである。

 このことは、この場所はすでに産科医療の場ではない事を意味する。国民も厚生労働省もこの理屈が分っているのだろうか?

 いや、そこは病院内だから医師の管理下にある。医師法下でこの分娩は取り扱われているのだ。とする見解もあるかもしれない。それならいいが、それなら従来の”病院内の産科病棟”と言えばいいであろう。もし医師法下にあるとすれば、この仕事は法的な助産師資格がある必要がない。

 法的な助産師資格が必要なのは医療施設を離れた場所で行われる助産なのである。

 今回の事業を行う為にはまずその法的位置付け、保健師助産師看護師法下にあるか医師法下にあるかを明確にしなくてはならない。(医師法下にあるならこうした新しい命名をする必要もない)

そこを曖昧にしておいて、双方のいいとこ捕りをしようなどという考えは結局、混乱と医療崩壊をまねくだけであろう。

第16章 YからX先生へ 5,25,8 (P.18)

16、 YからX先生へ5,25,8

From: 八木 謙

Sent: Wednesday, May 25, 2016 8:53 AM

To: OO

Subject: 保険所の認可

OO先生

八木です。

もう1つ妙案を思いつきました。

昨日、一昨日と保険所の保健福祉課と電話で話をして分かったことです。今のこの状況を話し、私の診療所内に院内助産所を開設したいとしたらどういう手続をすればいいか、というところから話を持ちかけました。岩国保険所管内では院内助産所の経験がないため院内保険所の法的扱いについて調べてくれました。

厚生労働省に問い合わせてくれたのでしょう。翌日、

:何も手続はいらない。院内助産所は法的には助産所ではない。ただ当院で院内助産所を始めると宣言すればいいだけだ。

つまり現存の院内助産所は助産所の認可を受けていないということです。

院内助産所で働く助産師は医師の指示下で医療の補助をする看護師である。

それでは院内助産所という名称自体が形容矛盾してるではないかと言うと、それは厚生労働省も困っているようです。との保険所の保健福祉課の回答。

また医師が立ち会わない助産師だけの出産は助産師名で出生証明書を提出しなくてはならないというところで意見は一致しました。(保険所は出生届けを見ていないから誰の名でこの届けが出されているか知る由もない。中絶の報告は保険所に出されるから母体保護法指定医による中絶であったこと、また違法性が無かったはチェックできる)

一晩考えたのですが、助産師が患者の自宅に出張してお産を取り上げる。これは法的に許されている。院内助産所はそれと同様と考えればいいか。 いや、違う。そうした自宅分娩の場合でも助産師は自分の開業する助産所で開業の許可を得ていなければならない。

以前、保険所の所長が自分でインフルエンザワクチンを購入し、自分の子と妻に注射したとして摘発された記事が載っていました。自分が医業を行う場所を持っていなかった。これは往診とは認められない。

自分が助産業を行う場所の認可を持っていない助産師が助産師単独で助産業を行ったこと自体が違法です。

院内の助産師は医療の補助をする看護師以外の何者でもない。

院内助産所の違法性が証明されました。

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八木クリニック

八木 謙 yagi-k@beige.plala.or.jp

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第17章 X先生からYへ 5,25,15(P.19)

17、 X先生よりYへ 5,25,15

From: OO

Sent: Wednesday, May 25, 2016 3:42 PM

To: 八木 謙

Subject: Re: 保険所の認可

いつもありがとうございます。当方の勉強不足でしたが、現在病院の勤務医には分娩1件で1-3万円の分娩手当が出ているようです。ですから病院勤務医師にとっては簡単で縫合等無い分娩が当然歓迎されます。院内助産で医師がいない方が歓迎されるとなると、手当が医師にとかないことになります。さらに長野県では分娩1件につき医師手当として数千円の助成金が病院に出ます。全く矛盾した話です。

ですので病院勤務の医師の一部は院内助産所に反対なようです。

医療行為については現在膠着状態です。日本産婦人科医会の連絡待ちですがわかりません。どこまで戦うべきか難しいところです。

OO市OO

産科婦人科OO医院

OO O

第18章 YからX先生へ 5,25,10(P.20)

18、 YからX先生へ 5,25,10

From: 八木 謙

Sent: Wednesday, May 25, 2016 10:55 AM

To: OO

Subject: 誤字

保険所ではなく保健所でした。

どこかへ出されるときは訂正して下さい。

第19章 X先生からYへ 5,26,16(P.21)

19、 X先生からYへ 5,26,16

From: OO

Sent: Thursday, May 26, 2016 4:26 PM

To: 八木 謙

Subject: Re: 誤字

とりあえずOO大学からの答えが来ました。これから検討してみます。先生のお考えもお教えください。ざっと読んだところあまりにありきたりで答えになっていない様に思いますがとりあえずお送りします。

――――――――――――――――――――

OO O 先生侍史

お世話になっております。いただいたご質問につきまして、厚労省からの意見も踏まえて現時点でのお答えです。「臨時応急手当」の解釈が問題になるかと思いますが、よろしくご理解の程お願い致します。

単独で助産院を開業している助産師にも会陰切開、局所麻酔の注射、会陰縫合はありとお考えですか。

①それは保健師助産師看護師法第三十七条に抵触し医師法違反となると思うがいかがでしょうか。

→これらの行為は、保健師助産師看護師法第38条における臨時応急の手当として実施される場合があると考えております。当該行為が保健師助産師看護師法第38条における臨時応急の手当に該当するものであれば、当該行為については保健師助産師看護師法第38条及び医師法第17条に抵触しないと考えております。

院内助産所に限ってそれは許されると考えられるなら、院内助産所での医師が立ち会わない分娩で、

②出生届けは当日の当直医の名前で発行するのか。

③それとも実際に取り上げた助産師の名前で発行するのか。

②の立ち会っていない当直医の名前で出生届を発行すれば医師法20条違反にならないか。

③の助産師の名で出生届けを出せばこれは助産師法下で行われた分娩であります。この分娩が医師法下にないならそこで助産師が行った会陰切開、局所麻酔の注射、会陰縫合は医師法17条に抵触しないか。

→医師が立ち会わず、助産師が分べんの介助を行った場合は、実際に分べんの介助を行った助産師が出生証明書を交付することになります。当該行為が、保健師助産師看護師法第38条における臨時応急の手当てに該当するものであれば、当該行為について、保健師助産師看護師法第38条及び医師法第17条に抵触しないと考えられます。

OO大学産科婦人科

OOOO

----- Original Message -----

>From: 八木 謙

>To: OO

>Subject: 誤字

>Date: Wed, 25 May 2016 10:55:29 +0900

>

>

>保険所ではなく保健所でした。

>どこかへ出されるときは訂正して下さい。

第20章 YからX先生へ 5,27,11,24(P.22)

20、 YからX先生へ5,27,11

From: 八木 謙

Sent: Friday, May 27, 2016 11:24 AM

To: OO

Subject: 質問状2

OO先生

八木です。

まあ、玉虫色の回答ですね。

で、次の質問状を作ってみました。

これを大学と県の両方に送ってみたらどうでしょうか。

<<一連の院内助産所で行われている行為は違法性を拭いきれない。>>

という一行を入れてみました。

役人はこういう言葉に弱い。違法の疑いがあるというだけで尻ごみをするのではないかと思います。

――――――――――――――――――――――――――――

以下 質問状2

質問状2

OO大学産科婦人科

OOOO先生侍史

厚生労働省は助産師が行う会陰切開、局所麻酔の注射、会陰縫合は保健師助師看護師法第38条における臨時応急の手当に該当すると認めたということでいいのですね。ならばこれは保健師助師看護師法内で行われている業だから個人開業助産師で行っていい。個人開業助産師において麻酔剤、注射器、注射針を購入することは可であると。

この法内の「臨時応急の手当」という用語をそこまで拡大解釈していいか分かりません。しかし厚生労働省が個人開業助産師にそれを許可しているのならそれは厚生労働省と個人開業助産師間の問題なので医師が口を挟むことではありません。どうぞ勝手におやりくださいということになります。

①次に貴大学が県内で推進しておられる院内助産所についての法的問題について質問致します。

私が調べたところ現存の院内助産所は助産所としての保健所の認可を受けていません。助産所としての保健所の認可を得る為には開設者およびそこの管理者としての助産師の届けが必要です。院内助産所はこの手続きを取っていません。そこは病院の一部であり、そこで働く助産師は医療の補助をする看護師だというのが保健所の解釈です。だから院内助産所を設ける時は何の保健所の審査も必要ない。ただ自分の病院は院内助産所を設けたと宣言すればいい。ということは助産所の認定を受けていない場所で保健師助師看護師法下の助産業を行うことは可能かという問題が起きます。

医師がいない場所で助産師がお産を取り上げ、助産師の名で出生届けをだす。しかし、ここは助産所の認可を受けていない。

助産師が患者の自宅に出張してお産を取り上げる。これは法的に許されている。院内助産所はそれと同様と考えればいいか。

いや、違う。そうした自宅分娩の場合でも助産師は自分の開業する助産所で開業の許可を得ていなければならない。

院内助産所の助産師は自分の所属する助産所がない。

これは医師の場合も同様です。

以前、保険所の所長が自分でインフルエンザワクチンを購入し、自分の子と妻に注射したとして摘発された記事が載っていました。自分が医業を行う場所を持っていなかった。これは往診とは認められない。

助産所の認可を受けていない病院内で助産師が保健師助師看護師法下の助産業を行う事は不可である。この場所で助産師が行っているのは法的には医療の補助という看護師業である。ならば医師のいないところでお産を取り上げ助産師名で出生証明書を発行するとこはできない。

一連の院内助産所で行われている行為は違法性を拭いきれない。

②では保健所から助産所としての法的手続きを受けてしまえばいいという考えもでてくる。しかしこうなった場合また新たな問題がでてくる。この助産所の管理者に助産師を登録することになる。法的にこの助産所の最高責任者はこの助産師の管理者となるのである。教授の指揮下に入らない。それで責任が取れるのか。

また医療事故調査委員会への届け義務もこの管理者が持つことになるのではないか。

第21章 X先生からYへ 5,27,11,50(P.23)

21 X先生からYへ 5,27,11

From: OO

Sent: Friday, May 27, 2016 11:50 AM

To: 八木 謙

Subject: Re: 質問状2

ありがとうございました。今から自分で作戦を練るところでした。とりあえず県にOO大学から出ている予算要望書の情報開示をしようと思います(初体験で開示方法は今から調べます)。OO大学がなにを考えているか書類がないとうまく攻められません。

日本産婦人科医会から先ほど電話があり

1.他の医療機関の影響があるので強く禁止の通達も出しにくい。

2.日本産婦人科医会より’助産師の会陰切開、縫合、局所麻酔は医療行為なのでこれに助成金を出すのは問題である’と長野県の環境衛生部長に文書又は電話する。

3.助産師にとっても、医療行為をさせることは助産師を犯罪に巻き込むことであり彼女らにとって得策ではない事を知らしめる。

2.3.をまず行う方向でいます。うまくいくとよいのでが・・。

先生の質問状もすばらしいので使用させていただきます。

第22章 X先生からYへ 6,1,8(P.24)

22、X先生からYへ 6,1,8

From: OO

Sent: Wednesday, June 01, 2016 8:31 PM

To: 八木 謙

Subject: 出生届け について

いつも大変にお世話になっています。その後ですが膠着状態ですが、

1.今日、OO県の担当課の課長と係長がきて2時間ほどはなしをしました。彼らは院内助産とは何かが分かっておらず、まず、浜松市の聖隷浜松病院助産の実例を示しました。

少なくとも、ここでは全く病院とは別のスペースが区切られており、会陰切開、縫合等はしていません。

2.出生届けに関しては保健師助産師看護法の第四十条

助産師は、自ら分べんの介助又は死胎の検案をしないで、出生証明書、死産証書又は死胎検案書を交付してはならない。 とあるため助産師のみの名前で出生届を院内助産で書いても問題ないとのことでした。しかし、この解釈は下記の先生のご指摘のごとく都合の良いいいとこ取りで、国立病院としては良識を疑う趣旨を言いました。かつ病院で医者がいるのになぜ緊急避難的に病院の助産師が会陰切開、縫合、局所麻酔が必要な事例があること自体が異常です。

3.他の医師の意見も聞きたいというので来週、前OO県産婦人科医会会長、前OO赤十字病院副院長の先生(私の恩師で国立大に院内助産の講座を作るのは異常だと、そもそも私に教えてくれた)が県庁に行って意見を言うことになりました。

つまり、病院内に保健師助産師看護法と医師法が混在していても全く問題ないとの考えです。しかし、病床や、入院患者の数はどう医務局に報告するのでしょう。7対1とか救急入院の割合とかきびしく決められているはずです。

こう開き直られると当方には反論が厳しいです。よいご意見がありましたら教えていただけませんか。よろしくお願いします。県は最初に補助金ありきでいるので難しいですが、院内助産の書類上の概念と実際の医療行為としての分娩との解離が大きいことは認識したと思います。いつも申し訳ありません。

―――――――――――――――――――――――――――――――

八木の意見

>>医師は医師法下で分娩を取り扱い、助産師は助産師法下で分娩を取り扱います。助産師は医療行為を行うことはできません。では院内助産所は医師法下にあるのか医師法下にないのか。ここは病院の一部だから医師法下にあると言えるという考え方とここは病院内にはあるが医師法下にはないここは助産師法で運営されている空間だという二種類の解釈ができます。この二種の峻別が曖昧にされ混ざり合って、ここは助産師法下にあるのだから助産師単独で分娩を取り扱うことができ、かつまた医師法下ともいえるのだから会陰切開、局所麻酔、会陰縫合という医療行為はこの場所でできる。この医療行為はこの病院の当直医師の委託で行っているのだから法的に問題はない。結局医師法下にないということ、と医師法下にあるということ、の両方のいいとこ取りをしている。欺瞞的な法解釈です。

第23章 YからX先生へ 6,3,6(P.25)

23、YからX先生へ 6,3,6

-----Original Message-----

From: 八木 謙

Sent: Friday, June 03, 2016 6:34 AM

To: OO

Subject: Re: 出生届け について

OO先生

色々考えています。

まず私の頭の整理として以下の点について教えて頂けますか。

1、県の課長さんや係長さんの院内助産所についての理解度

(私の書いた意見書の①と②《出生証明書の発行者》の矛盾点は理解されているか)

2、《助産師のみの名前で出生届を院内助産で書いても問題ないとのことでした》

これは誰の見解ですか?

厚生労働省?保健所?国立病院の院長?

3、《病院内に保健師助産師看護法と医師法が混在していても全く問題ないとの考え》これもどこの見解ですか?

厚生労働省?保健所?国立病院の院長?

当局の見解なら闘う相手は厚生労働省です。

2、と 3、についての反論はできます。少しお待ち下さい。

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八木 謙 yagi-k@beige.plala.or.jp

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第24章 X先生からYへ 6,3,7(P.26)

24、X先生からYへ 6,3,7

From: OO

Sent: Friday, June 03, 2016 7:55 AM

To: 八木 謙

Subject: Re: Re: 出生届け について

早速返事をいただきありがとうございます。2.3については県の答えは厚労省看護課に問い合わせてのことと認識しています。(県との2時間の面談は皆レコーダーで録音しましたので時間があったらもう一度確認します)。1については私の頭がまだ動いていないので後でメールします。 昨日はOO大学教授OO先生(院内助産反対)と育成医療センターのOO先生(医師との共同の院内助産賛成)に電話して意見をお聞きしました。日本助産師学会、厚労省看護局から院内助産マニュアル等が出ています。これは手強いです。

今日は日本産婦人科医会関係でOO大OO教授に電話して意見と何か対策を聞く予定になっています。また先生の力をお貸しください。 取り急ぎこれまで。また頭を整理してご連絡します。

第25章 X先生からYへ 6,5,9(P.27)

25、X先生からYへ 6,5,9

From: OO

Sent: Sunday, June 05, 2016 9:47 AM

To: 八木 謙

Subject: 研究班報告について

いつも助けていただきありがとうございます。その後ですが

1.助産業務ガイドライン2014が出ており、ガイドラインを作成した委員長宮崎医大教授池ノ上先生、委員日本医大教授中井先生にご相談しました。中井先生の話は助産師の医療行為は考えていないとの明確な返事です。院内助産は範囲が明確にできないので、各医療機関の実情によりおのおの考える物で講座を作って広めるという性格の物ではないというご意見でした。

2.厚労省の研究を調べたところ、院内助産の研究班報告はいくつもありました。ほとんどが看護大学等の看護教官が報告したものです。これらには当然のごとく助産師には何でもさせよの精神で書かれています。

医師が報告した物はこれしかとりあえずみつかりません。しかしながら2の16ページに医療行為の禁止が書かれています。古いですが一応参考までにお送りします。

金曜に、県の係長と電話で話したところ、助成金を出した場合、実際に院内助産がなされているかその成果をみて助成金の交付を継続するかどうか決める事もどうかと言う意見が出ています。

以上

いつも助けていただきありがとうございます。感謝しています。

OO市OO

産科婦人科OO医院

OO O

第26章 YからX先生へ 6,5,14(P.28)

26、YからX先生へ6,5,14

-----Original Message-----

From: 八木 謙

Sent: Sunday, June 05, 2016 2:46 PM

To: OO

Subject: 院内助産所という幻想

OO先生

八木です。

県の部長さんや科長さんは何も理解しておられないでしょう。

彼ら向けにこういう文章を作ってみました。

厚生労働省をかなり非難する文章になりました。

その為文の最後に(文責 八木)としておきました。

当局から追求されても八木の文章から引用したとされればいいと思います。

もちろん文章だけコピーしてOO先生の名で出されても、前産婦人科医会会長の名で出されてもかまいかせん。

自由にご利用下さい。

また、私の名前で公けにされることも一向にかまいません。

研究報告書には”「院内助産所」は医療法でいう「助産所」ではない”という一文がありました。

訳が分かりませんが、たぶん法的な矛盾に感づいているのでしょう。

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院内助産所という幻想

平成28年6月5日

 県の課長さんやと係長さんに院内助産所の話をしてもよくお判りになれないというのは当然の事なのです。実は一般人のみならず医療関係者までもこの院内助産所の正体を理解していないのが現状です。

では、「院内助産所」という用語は法的にどう定義されているのか。法的な定義はありません。医師法内にも保健師助産師法内にも医療法内にもこの用語はありません。

確かに厚生労働省はこの用語を使っています。しかし厚生労働省もその定義を示していません。一般的な解釈は医療施設内(病院内、医院内)において助産師が助産業を行うことが出来る場所という事でしょう。

ここは医師は立ち会わない助産師主導の分娩施設である。この場所は医師法下になく医師の管理下に置かれていないため全体の雰囲気はやわらかく快適で、しかも医療施設の敷地内にあるため異常が起こったときは直ちに医療が受けられ安心だという利点がある。

いいとこ尽くめの分娩場所ということですが、そこには問題があります。

今回、調査してみますと院内助産所は保健所から助産所の認可を受けていないことが判明しました。助産所としての保健所の認可を得る為には開設者およびそこの管理者としての助産師の届けが必要です。院内助産所はこの手続きを取っていません。そこは病院の一部であり、そこで働く助産師は医療の補助を行う看護師だというのが保健所の解釈です。だから院内助産所を設ける時は何の保健所の審査も必要ない。ただ自分の病院は院内助産所を設けたと宣言すればいい。しかし助産所の認定を受けていない場所で保健師助師看護師法下の助産業を行うことは可能かという問題が起きます。

保健師助産師看護師法というのは保健師法、助産師法、看護師法の3種の法を集合したものです。助産師が助産を行うのはこの中の助産師法によります。今回のテーマは助産に関わることなので便宜上3つの中の助産師法のみ取りだして考察して行く事にします。

医師がいない場所で助産師がお産を取り上げ、助産師の名で出生届けを出す。しかしここは助産所の認可を受けていない。それは通るのか。

助産師が産婦の自宅に出張してお産を取り上げる。これは法的に許されています。院内助産所はそれと同様と考えればいいでしょうか。いいえ、違います。そうした自宅分娩の場合でも助産師は自分の開業する助産所で開業の認可を得ていなければなりません。院内助産所の助産師は、自分の所属する助産所がない。

 これは医師にも同様なことが言えます。以前、保健所の所長が自分でインフルエンザワクチンを購入し、自分の子と妻に注射したとして摘発された記事が載っていました。自分が医業を行う場所を持っていなかった。これは往診とは認められないのです。

結局、院内助産所の助産師が行っているのは助産師法下の助産ではなくて医師法下の医療の補助なのです。院内助産所で取り扱われた分娩は医師法下にあり助産師が出生証明書を作成することは出来ません。助産師法下で取り扱われた分娩にしか助産師は出生証明書を書くことが出来ない。では医師名で出生証明書を発行すればいいか。それも出来ません。

医師法第20条 医師は、自ら診察しないで治療をし、若しくは診断書若しくは処方せんを交付し、自ら出産に立ち会わないで出生証明書若しくは死産証書を交付し、又は自ら検案をしないで検案書を交付してはならない。

に抵触します。

現行の院内助産所では医師、助産師のどちらで出生証明書を作成しても違法です。というか、医師のいない場所で助産師単独で助産を扱うこと自体が違法です。

これらを合法とするには院内助産所が助産所の認可を受けていなくてはなりません。現在の院内助産所では医師不在の助産師のみの分娩は法的に出来ない。

 こうした誤謬はどこから生じたのでしょうか。院内助産所は医師法下になく助産師法下にあると錯覚した事によるものです。一般大衆のみでなく、当該助産師、医師もそう錯覚しました。そう錯覚させた責任は厚生労働省にあります。院内助産所という欺瞞的な用語を使いこの場所は医師法下にないと印象付けたのです。しかし現実には助産所としての保健所の認可を受けていなかった。

また、厚生労働省は“病院内に保健師助産師看護師法と医師法が混在していても全く問題ない”との見解を示しました。

これは次の意味においては問題ないと言えます。

この場所で医師は医師法下で医療を行い。保健師助産師看護師は保健師助産師看護師法下で医療の補助を行う。これは看護師としての仕事です。

ここでこの2つの法は混在していい。

しかし、繰り返しますが医療機関は院内助産所も含め助産所の認可を受けていません。この場所で助産師は保健師助産師看護師法下の助産を行う事は出来ない。

この場所で助産師が出来るのは保健師助産師看護師法下の医療の補助だけです。

そういう意味で厚生労働省のこの見解は1部正解、1部不正解となります。

 以上院内助産所の法的欺瞞性がお判り頂けたと思います。

では、長野県が県として県内に合法的院内助産所を推進させることが適切か否か考えてみます。

 院内助産所で可能な法構成は以下の3つになると思います。

① 院内助産所は医師法下にあり、助産師法下にない。

② 院内助産所は医師法下になく、助産師法下にある。

③ 院内助産所は医師法下にあると同時に助産師法下にある。

① は現状のものです。医師を除いて助産師のみで分娩を扱おうとすると先ほど述べたような法的不都合がおきます。

② は病院の敷地内でなく、病院に隣接する場所に院内助産所と称するものを作り、そこを助産所として保健所から認可を受けることで可能です。これなら助産師法下にある。病院内にあっても、医師法下にない場所を設置してしまえばそれで同等でしょう。これは開業助産所と同等ですから、この助産所の開設者と管理者である助産師を置かなければなりません。この管理者の助産師がこの助産所の最高責任者となります。医療事故調査委員会への届けもこの助産師が行わなければなりません。更に助産所の入居者は1度に10人を超えてはならないという法規制があります。これは個人産科開業医有床診療所のベット数が19床までに比べるとその半数です。院内助産所で50~120人もの助産師を抱えてこの分娩数では採算が合わないでしょう。また、そんな責任の重い管理職を引き受けてくれる助産師が居るかどうか。

③ は医師法下にある医療機関内の1部を保健所から助産師法下にある助産所としての2重の認可を受ける。保健所がこんな認可をするかどうか分かりませんが、もしその認可が受けられればこの場所は医師法と助産師法の2つの法の下にあるとなる。ただ2つの法が競合した場合、どちらかの法を優先するかという判断にせまられます。この場合、医師法が助産師法に優先する。

保健師助産師看護師法第30条 助産師でない者は、第三条に規定する業をしてはならない。ただし、医師法の規定に基づいて行う場合は、この限りでない。

この法文は「助産師でなければ助産業をしてはならない」というものですが、医師法下では前段の「助産師でなければ助産業をしてはならない」という文章が打ち消される。この一文があるから我々医師は助産師免許を取得していなくても助産行為が可能なのですが。助産師法と医師法が混在する場所では医師法が優先されるという証拠です。

もっと簡単に言うと、

医師法と助産師法が混在する場所において、ある行為が医師法下では許される、助産師法下では許されないとなる場合、その行為は許される。また別のある行為が医師法下では許されない、助産師法下では許されるとされた場合、その行為は許されない。つまりこの混在場所では助産師法はあってもなくてもいいのです。医師法下では助産師法は存在理由がない。

では、助産師法と医師法が混在するという場面が過去にあったことがあるだろうか。あります。こんな場面です。開業助産師の助産所に医師が呼ばれた。医師が到着するまではここは助産師法下です。医師が到着した瞬間ここは助産師法下と医師法下の2つの法の下にある。2つの法の下にあったとしてもすでにここでは助産師法はその効力を失っている。2つの法の下にあっても医師法1つの下にあるのと同じことなのです。院内助産所を医師法下と助産師法下に同時にあると設定したら、その場所で医師法を犯す行為は出来ない。結局③は①と同じことです。

3つの形式、何れもうまくいかない。③は同時期に2つの法の下にあるとしたことでうまくいかなかった。では時間差をもって、ある時期は②の形式をとりある時期は①や③の形式にすることは可能だろうか。ある場所を医師法下の医療施設と助産師法下の助産施設の2重の認可を受けておいて、あるときは医師法下にあり、またあるときは医師法下になく助産師法下に置く。これは可能でしょう。こんな例があります。歯科医師が自分の診療所を内科医師に貸す。月、水、金は歯科医師が歯科医療を行って、火、木、土は内科医師にその場所を家賃を貰って貸し出す。この場所は歯科医師法下と医師法下の両方の法の下にある。

2重の認可を受けておいて分娩が正常に進んでいる間はこの場所を助産師法下に置く、その時間帯は医師法下にない。異常が起これば医師法下に切り替える。これは可能です。この場合は助産師が分娩を取り上げ助産師が出生証明書を発行していい。しかし、そこは一切の医療行為は行うことが出来ません。会陰切開、局所麻酔、縫合などは以てのほかです。更に分娩室に入ってからの血管確保、これを行った瞬間この場所は医師法下となり助産師法は効力を失い、助産師単独での助産は違法となる。

いまどき血管確保をしないで、出産にのぞむなんてことは考えられない。

医師法下にないことの利点と医師法下にあることの利点を同時に受ける事が出来ると思い込んだのはただの幻想に過ぎなかった。

                        (文責 八木 謙)

第27章 X先生からYへ 6,5,16(P.29)

27、X先生からYへ 6,5,16

From: OO

Sent: Sunday, June 05, 2016 4:08 PM

To: 八木 謙

Subject: Re: 院内助産所という幻想

ありがとうございます。私も県と話していても堂々巡りだったので、では書面で院内助産の定義を出してくださいと話しました。また一体血管確保は誰がするのか、産婦人科診療ガイドライン産科編には血管確保するように書かれているが、助産師だけですれば医師法違反ではないかと話しました。ここら辺から高飛車だった県の担当者は困ったという対応になり、下手に出るようになりました。

しかし、産婦人科医会で院内助産の記者への公開文書などがある事を知り全面的に院内助産を否定するのは困難な様な気がしてきました。ただ各医療施設で検討するのは好きですが、国立大学が音頭を取って全県に広めようとするのは感心しません。

最近、OO県院内助産推進委員会なる物があるのを知りました。メンバーはOO大学教授とOOマタイティー医院のOO医師等です。後者は有名な方で先生もご存じだと 思いますが、減胎手術等何でもありの豪腕な医師です。彼がO大の教授の知恵袋で院内助産を勧めているようです。確かに彼の医院のような開業医(分娩数は多く助産師は多いようです)には助産師で分娩を完結しておいてくれば医師は楽です。何か全体像が見えてきた感じがしました。

これから再度先生の文書を読ませていただきます。あす前県産婦人会会長と県の話し合いがあるのでその様を見たいと思います。

第28章 X先生からYへ 6,6,11(P.30)

28、X先生からYへ 6,6,11

From: OO

Sent: Monday, June 06, 2016 11:46 AM

To: 八木 謙

Subject: Re: 院内助産所という幻想

いろいろありがとうございます。本日、先生の文書を前OO県産婦人科医会会長にお見せしたところ、本日の県の面談の参考にして臨むとの事です。

第29章 X先生からYへ 6,6,20(P.31)

29、X先生からYへ 6,6,20

From: OO

Sent: Monday, June 06, 2016 8:39 PM

To: 八木 謙

Subject: Re:

色々とご協力していただき感謝しています。本日の前産婦人科医会長と県の話では、助産師の医療行為は考えられないという点で一致し、講座での講義内容を検証するというところまで来ました。

ところで4-5日前にOO大学から院内助産師養成講座の募集のパンフレットが各病院(当院には来なかった)に送付され様です。秋より県から助成金が出て院内助産師の育成講座を開くので助産師の募集(受講後はスペシャルな称号を与える)、講師、講義の期間、内容と単位等が書かれています。あす私に届く予定です。以前の産科看護師の助産師版を公認して医療行為をさせるという無謀な講座です。OO市で年1000件の分娩を扱う病院院長とも相談して、OO県だけの問題では無く、全国に飛び火しないうちに断固阻止しないといけないという結論に3人で至っています。明日入手後に先生にも何らかの方法(PDFが良いと思いますがスキャナーが無いので写真または郵送になりそうです)でお送りしますのでご助言等をまたいただければありがたいです。まず、現在の産婦人科医会長木下先生、産婦人科学会理事長東大OO先生(前OO県産婦人科医会長の部下)、産婦人科学会副理事OO先生(私の後輩)に直ちに送付して講座の阻止をお願いする予定です。

全国問題になってきたと認識していますがOO市の数人の産婦人科医しか問題として認識していません。全国に知らしめて問題を広く提起し阻止する良い方法が浮かびません。ご意見がありましたら教えていただけないでしょうか。いつも助けていただくばかりで申し訳ないです。

OO市OO

産科婦人科OO医院

OO

第30章 YからX先生へ 6,7,7(P.32)

30、YからX先生へ 6,7,7

From: 八木 謙

Sent: Tuesday, June 07, 2016 7:52 AM

To: OO

Subject: 助産師単独での助産は認めない

OO先生

八木です。

≪医療機関内で助産師単独での助産は認めない≫

という声明を日本産婦人科学会、日本産婦人科医会から出して貰ったらどうでしょう。

「助産師単独での助産は助産所の認可を受けている場所に所属する助産師にしか認められない」

院内助産所は助産所の認可を受けていない。

ここは医療機関である。そこでの助産師の身分は医療の補助をする看護師である。これは保健所の見解でもあります。

昨年、日本産婦人科医会は「助産師単独での助産は認めない」という声明を出しています。再度お願いしてみては。

これは、「学会、医会は院内助産所を認めない」という意味になります。

昨年、マスコミが流した「助産師単独でのお産」のすすめというのは厚生労働省からのリークに違いありません。

それに医会は反撥しました。

今回厚生労働省と全面対決する姿勢を医会・学会が示すのがいいでしょう。

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第31章 院内助産所と助産師外来の開設(P.33)

31、院内助産所と助産師外来の開設を国が支援

http://www.wic-net.com/search/search798-3.html

2008年03月31日(月)

院内助産所と助産師外来の開設を国が支援  実施要綱通知

院内助産所・助産師外来開設促進事業等の実施について(3/31付 通知)《厚労省》

発信元:厚生労働省医政局  カテゴリ:医療提供体制

 厚生労働省が3月31日付けで都道府県宛てに出した、院内助産所・助産師外来開設促進事業等の実施に関する通知。この通知は、産科医療の確保の観点から、妊婦の多様なニーズに応え、地域における安全・安心・快適なお産の場を確保するために、「院内助産所・助産師外来開設促進事業」と「助産師活用地域ネットワークづくり推進事業」を4月1日から実施するとして、実施要綱を示している(p1参照)。

第32章 木下会長抗議文(P.34)

平成27 年11 月25 日

日本経済新聞社殿

公益社団法人日本産婦人科医会

会長木下勝之

平成27 年11 月13 日の日本経済新聞夕刊の掲載記事に関する抗議文

貴社は、平成27 年11 月13 日付けの日本経済新聞夕刊1 面において、「「助産師だけでお産」後押し」のタイトルで、「厚生労働省は母子ともに健康で困難が伴わない出産について、産科医なしに助産師だけで対応できるよう全国の病院に促す。人手不足が深刻な産科医の負担を軽くし、高齢出産などリスクが高い 妊婦への対応に専念しやすくする狙いだ。助産師を多く配置する病院を補助金などで優遇する。」との記事を配信されました。

この記事の内容を「周産期医療体制のあり方に関する検討会」委員等に確認しましたが、検討会委員からも、「このようなことを是認する内容の議論は一度もしたことはないとの回答を得ております。

このような事実にもかかわらず、どのような根拠によるものかわかりませんが、貴社の記事は、多くの事実誤認に基づいた内容であり、日本の周産期医療を地域において死守している産科有床診療所における懸命の対応に水を差し、多くの産婦人科医の努力を無にする内容を含んでおり、我が国の代表的な新聞社である日本経済新聞社としてきわめて遺憾な記事であります。

厚生労働省は本年8月より、第1回「周産期医療体制のあり方に関する検討会」を開始しました。そこでは、これからの周産期医療体制は、都会と地方では周産期を担当する病院、診療所、助産所などの実態は大きく異なっていることから、各地域の実情に併せて、診療所が多い県では、診療所が有効に機能するような周産期センターとの連携のあり方を検討すべきです。一方、診療所が少なく周産期センターが中心である地域では、その県全域をカバーするための有効な体制作りを考えるなど、地域の実情に合わせた周産期医療体制作りをすべきであると、日本産科婦人科学会と日本産婦人科医会は同じ意見を述べています。

この各地域の実情に合わせた地域周産期医療体制の中に、特に、国が病院に補助金を出してまで助産師を多く雇い、安い分娩料で出産をさせる等といった体制は含まれていません。

10 月15 日に第2回「周産期医療体制のあり方に関する検討会」が開催され、そこでは助産師の役割についての議論がされました。日本産科婦人科学会と日本産婦人科医会代表の委員は、分娩は、一見正常に経過しても全ての分娩のうち約15%に問題が生じて、急速遂娩が必要になることがあることから、分娩には常にリスクを伴うことを理解し、助産所の開設は病院の近く、あるいは、院内助産にして、医師の管理下で分娩業務をすることが望ましいことを述べました。

したがって、産婦人科医の代用として助産師が分娩をすることを増やし、医師の業務を軽減させる等の発想はまったくありません。

国民の健康と安心を第一の課題であると考える限り、助産師の活用を医師の代行とする考え方は、今後もあり得ない対策であります。

わが国は平成18 年頃から産科医療崩壊の危機的状況を経験し、国を挙げて周産期医療体制の再構築を進めてきました。確かに、一時産婦人科を専攻する研修医は増えましたが、この3年前から産科医師希望者が減り続けており、分娩取り扱い施設の数も減少傾向が続いています。この課題は、国の少子化対策にも影響しており、地域で若者夫妻が子供を分娩する施設が近くにない現象が起き始めています。

妊産婦の安全と安心のために安易な対策ではなく、医師の診療科の偏在と産婦人科医師の地域偏在の解消をいかに達成するかが、国の最大の課題であると認識しています。

国を代表する新聞社である日本経済新聞社は、医療の領域、特に周産期の領域の課題に関しても、類推ではなく、日本産婦人科医会と日本産科婦人科学会の正確な情報を基に、国民はもとより、分娩を担当している診療所医師あるいは病院勤務医師を勇気づける内容の記事記載をお願いいたします。

第33章 YからX先生へ 7,8,9(P.35)

33、YからX先生へ 7,8,9

-----Original Message-----

From: 八木 謙

Sent: Wednesday, June 08, 2016 9:57 AM

To: OO

Subject: Re: 抗議文

今後の戦略としては、

「院内助産所」は助産所としての認可を受けていない。ここでの助産師単独での助産は違法である。

この単純明快な1本で攻めたらどうでしょう。

木下先生の抗議文では一応院内助産所を認めている。これは開業助産所より院内助産所をすすめるという意味でしょう。医師の代用としての助産師はないと言明されている。

本当は木下先生にも院内助産所は法的に問題があるというところに気付いてもらえるといいのですが。

この理論は事実なので難攻不落です。

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第34章 X先生からYへ 6,8,11,01(P.36)

34、X先生からYへ 6,8,11,01

From: OO

Sent: Wednesday, June 08, 2016 11:01 AM

To: 八木 謙

Subject: Re: Re: 抗議文

先ほど日本産婦人科医会より電話がありました。

1.院内助産の他にも問題が山積している。たとえば看護師による子宮癌検診の実施問題などいくつかある。その中の1案件としてOO大学の院内助産を認識している。

2.本日、木下会長と厚労省医政局長との会談があるのでその席でOO大学の院内助産問題も議題になるでしょう。

とのことです。事務局よりは性急にならず、少しずつ解決するとの電話でした。以上。

ちょうど良いときに院内助産案内のリーフレットが入手できたと思います。今後ともよろしくお願いします。取り急ぎ連絡します。

第35章 X先生からYへ 6,6,11(P.37)

35、YからX先生へ 6,8,11,16

From: 八木 謙

Sent: Wednesday, June 08, 2016 11:16 AM

To: OO

Subject: Re: 抗議文

OO先生

八木です。

ちょっと訂正します。

木下先生に諫言するのはよくありませんね。それは木下先生が間違っていると言うことになります。

ここはOO大学が言う「院内助産所」と木下先生のおっしゃる「院内助産所」はその定義が違うと言いましょう。

1、OO大学の言う「院内助産所」

ここは助産師単独で助産をあつかう。ここは助産師法下にある。

2、木下先生の「院内助産所」

医師の指示の下、助産師は医療の補助として助産をあつかう。

この院内助産所は医師法下にある。保健所の解釈と一緒です。

木下先生の「院内助産所」の解釈は法的に正しい。

一方、OO大学の「院内助産所」は違法である。

こういう言い方にかえましょう。

第36章 X先生からYへ 6,8,11,51(P.38)

36、X先生からYへ 6,8,11,51

From: OO

Sent: Wednesday, June 08, 2016 11:51 AM

To: 八木 謙

Subject: Re: Re: 抗議文

なるほど、了解しました。先生のおっしゃる通りと思います。たぶんですが、OO大のパンフレットを読めば木下先生を責める目的ではないことはわかっているとは思いますが、今後気をつけて交渉します。ありがとうございます。

第37章 X先生からYへ 6,13,10(P.39)

37、X先生からYへ 6,13,10

From: OO

Sent: Monday, June 13, 2016 10:05 AM

To: 八木 謙

Subject: 院内助産 とりあえずご連絡します

いつも大変にお世話になっています。また子宮癌検診が看護師でも出来るとの政府見解のようですが信じられません。彼女(薬師寺参議院委員)の後ろには前久留米医大の薬師寺先生がいるはずなのにどうなっているのでしょう。ますます産婦人科はやってられないです。

院内助産については昨日、日本産婦人科医会の会でOO県産婦人科医会長に医療行為は院内助産で止めるようにとの話があったそうです。その前に土曜にOO教授からOO県産婦人科医会長に電話があり、講座では会陰切開、縫合、局所麻酔は教えないと電話があったそうです。ただパンフレットが出ていますので回収、明文化はさせないといけないです。委員会の具体的な様子は聞いていません。また先生が会議の様子等ご存じでしたらお教えください。院内助産に対して私は反対ですが、全国には賛成派も多いようなので様子見かもしれません。取り急ぎご連絡します。

第38章 YからX先生へ 6,14,9(P.40)

38、YからX先生へ 6,14,9

From: 八木 謙

Sent: Tuesday, June 14, 2016 9:52 AM

To: OO

Subject: Re: 院内助産 とりあえずご連絡します

OO先生

八木です。

連絡ありがとうございました。

私の方では会議の詳しい様子は掴めません。

OO教授が産婦人科医会会長会議の前日、会陰切開、縫合、局所麻酔を断念したのは何故か。

一晩考えてみたのですがこれは厚生労働省の指示による。

こうすることにより医会本部がこの計画に反対する理由を失ってしまうことが目的である。

そこを断念してもこの計画を実行したい。まず1つの県でとにかく成功させる。

県が強気にでるのは、すでに国から充分にお金が県に降りていてこの事業をしないと全額返還となるのが困る。

パンフレットによると半年間の院内助産師リーダー養成は無料で行うことになっています。助成金なければ成り立たない。いずれも推測に過ぎませんが。

ただ厚生労働省の為すがままにされて、沈黙していては、

10数年前の個人開業医の廃業に追い込まれた看護師内診問題のときと同じことが起こります。

国は個人産科開業医をつぶして集約化を図っている。

看護師内診問題で開業医がお産から遠のいて日本の産科医療がよくなったとは思えません。

院内助産所が全国に広まるようなことになれば日本の産科医療の崩壊です。

第39章 X先生からYへ 6,14,10,06(P.41)

39、X先生からYへ 6,14,10,06

From: OO

Sent: Tuesday, June 14, 2016 10:06 AM

To: 八木 謙

Subject: Re: Re: 院内助産 とりあえずご連絡します

メールをありがとうございます。先に県に情報開示を求めた所、OO大学の委託事業要望書等の文書が今ついたのでPDFにして今日お送りします。また知恵をお貸しください。先生のおっしゃる通りに県はとにかくお金を大学に渡さないと困るのです。当方はこれから帝切です。又よろしくお願いします。

第40章 X先生からYへ 6,14,16(P.42)

40、X先生からYへ 6,14,16

From: OO

Sent: Tuesday, June 14, 2016 4:54 PM

To: 八木 謙

Subject: PDF

OO大学で計画している講座の県への要望書です。またきちんとしたPDFを作ってお送りします。ご意見がありましたまた教えください。ファイルサイズが大きいので圧縮して送ります。当方もこれから読みます。

OO

産科婦人科OO医院

OO

YからX先生へ 6,15,11(P.43)

41、YからX先生へ 6,15,11

From: 八木 謙

Sent: Wednesday, June 15, 2016 11:29 AM

To: OO

Subject: Re: PDF

OO先生

八木です。

PDF読みました。

昨年11月25日、木下先生から日経新聞の記事へ抗議文が送られていますが、(記事は11月13日)

OO大学からOO県へのこの要望書は9月に書かれています。

要望書と抗議文を今読んでみますと、木下先生はつんぼ桟敷に置かれていたという事になります。

日経新聞が反論しなかったのはそのソース原を口止めされていたからでしょう。日経新聞がこの要望書を手に入れていたのは間違いありません。

医会本部はいい面の皮です。

第42章 YからX先生へ 6,15,15,05(P.44)

42、YからX先生へ 6,15,15,05

From: 八木 謙

Sent: Wednesday, June 15, 2016 3:05 PM

To:

Subject: 要望書

この要望書には、

「県内の産科医師の減少に歯止めがかからず」

「特にOO県のような産科医が慢性的に不足する地域では」

「大規模な周産期医療の崩壊に直結する危険性があります」

といった、不安を煽る表現が続き、この地に院内助産師リーダーの養成が住民にとって不可避であるとしています。

県の職員は納得するでしょう。

すでに今年の10月1日から開始の計画

結構な予算を計上してある。

研修者を派遣してくれた施設には補助金まで出すとなっています。

ここまで来てこれを止めることができるかどうかですが、

県医会会長は向こうについている。県医師会会長や県知事が味方についてくれるかどうか?

全国の医師にOO県の無謀さを知らせて反対意見を集める。

この件、公けにし、そして全国的な動きにしてはどうでしょう。

OO県が崩れたら一気に全国に広がる。なんとしてもOO県でくいとめなければ。と

第43章 X先生からYへ 6,15,20(P.45)

43、X先生からYへ 6,15,20

From: OO

Sent: Wednesday, June 15, 2016 8:57 PM

To: 八木 謙

Subject: Re: 要望書

とりあえず今ブログを作ってみました。初体験なので1部のみですが、公開に備えての試みです。もし先生がブログとかほかのSNSがお得意でしたらお教えください。そういえば先生はご意見をホームページにアップされているのを思い出しました。おかずかしい中身のブログです。

http://xxxxxxxxxxxxxxx.com/blog/

第44章 YからX先生へ 6,16,10(P.46)

44、YからX先生へ 6,16,10

From: 八木 謙

Sent: Thursday, June 16, 2016 10:54 AM

To: OO

Subject: Re: 要望書

OO先生

八木です。

先生のブログ見ています。

内容が増えていますね。

今度はこの企画に反対する考え方を「最近のコメント」欄に掲載して行けばいい。

OO先生が最初に私にメールを送られたとき、一昨日の医会の会議ではじめてこの企画を聞いて驚愕したとありました。この事の発端をまず書かれては。

木下先生の日経新聞への抗議文も掲載されれば、(これは公開されているものですから掲載しても問題ない)

私の6月5日の県職員むけの「助産所という幻想」ともどうぞ、

あとは医師むけになにか文章を考えてみます。

「助産師だけでのお産」と「後押し」で検索すると沢山ヒットします。

第45章 YからX先生へ 6,17,9(P.47)

45、YからX先生へ 6,17,9

From: 八木 謙

Sent: Friday, June 17, 2016 9:05 AM

To: OO

Subject: ブログ

OO先生

ブログいいですね。

なぜこの企画に反対なのかよく分かります。

そろそろ日本産婦人科医会MLに流してみたらどうですか。

賛成意見、反対意見とも管理者のOO先生へ投稿頂き、チェック後掲載する。

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742-0322

山口県岩国市玖珂町829-1

八木クリニック

八木 謙 yagi-k@beige.plala.or.jp

℡ 0827-82-1212

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第46章 X先生からYへ 6,17,15(P.48)

46、X先生からYへ 6,17,15

From: OO

Sent: Friday, June 17, 2016 3:03 PM

To: 八木 謙

Subject: Re: ブログ

ありがとうございます。県の担当者にURLを教えて見させたところ、待ってくれと横やり(当然ですが)が入りました。OO大学では今パンフレット等を作り直しているそうです。当方はアンフェアな事は何もしていないので待つ理由もないです。ただ、論点を’県の院内助産開設の予算が産婦人科医の増加に役立つかどうか?’と’院内助産で助産師が危険にさらされる点’を追加して掲載すれば周囲の賛同を得やすいのではないかと考えています。もう少し(土日)考えてみます。今日、今分娩誘発中の人が生まれたら、前産婦人科医会長と知り合いの院長の3人で会うことになっています。またお考え等お教えください。

今のWEB社会は怖いですね。全くの素人でもすぐにSNS等で全国に拡散できてしまう。ブログを作ってみてつくずく思いました。

第47章 YからX先生へ 6,20,9(P.49)

47、YからX先生へ 6,20,9

From: 八木 謙

Sent: Monday, June 20, 2016 9:57 AM

To: OO

Subject: Re: ブログ

OO先生

県の担当者がOO先生のURLの公表を待ってくれと言ってるのは、

OO大学の新しいパンフレットが出来あがったら差し替えろという事だと思います。

新しいものが出来ても古いパンフレットも公表すべきです。当初の計画が入っているのですから。

新しいものが出来たらその時点でそれを追加するのでいいと思います。

私の考えは、

=>院内助産所は助産所の認可を受けていない。

=>ここで助産業を営むことは違法である。

=>違法な院内助産所のリーダーを育成する大学の講義に反対する。

=>その講義に補助金を出す県の姿勢に疑問を呈する。

という論法です。

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第48章 YからX先生へ 6,20,15(P.50)

48、YからX先生へ 6,20,15

From: 八木 謙

Sent: Monday, June 20, 2016 3:45 PM

To: OO

Subject: 医政局長通知

医政局長通知なんて怖くありません。

https://www.yagiclinic.jp/koume/html/modules/news/article.php?storyid=10

2007-6-19 の私のURLに当時の「医政局長通知」への反論文を載せています。

いま読み直してみても私の言い分の方がすじが通っている。

「看護師は助産師の指示の基、助産の補助を行う」などという法解釈は日本のどの法からも出て来ない。

第49章 医政局長 (P.51)

49、医政局長

やぎこらむ:「医政局長保助看法問題の解決」に異論

投稿者:koume投稿日時: 2007-06-19 09:05:31(679 ヒット)

「医政局長保助看法問題の解決」に異論

                                    平成19年6月19日

 

                                    山口県  八木 謙

日医ニュースに「医制局長通知により保助看護問題が解決」という記事が掲載された。いわゆる内診問題の解決ということだが、実際は何も解決していない。この通知は看護協会側から見れば看護師の内診を認めないとしたととれ、産科医側から見れば看護師の内診を認めたととれる表現で、何の問題の解決にもなっていない。

 

 では法自体は一体どう言っているのか、原点に戻って考えてみたい。

 

お断りしておくがこの問題を産科開業医と助産師達との利権争いという眼で捉えないで頂きたい。法理論の上で何が正しいか、そしてこの国の産科医療の目指すものは何かという視点で考えて頂きたいのである。

 

以下に現行法を示す。

image32-1

3条と30条は対になって助産師の業を規定している。5条と31条は看護師のそれを、6条と32条は准看護師のそれを表すものである。更に31条においては助産師に看護師の業を為すことが出来ると定めている。

 

これから行くと看護師は自らの判断で行う看護と医師の指示の基で行う医療の補助を行う事ができる。准看護師は看護と医療の補助を行うことができるが、看護については自らの判断で行うものではない。助産師は助産と看護と医療の補助を行う事ができる。

 

 一般常識として浸透している助産師の医療業務の中での位置づけは以下のようになっていると考える。

 

ⅰ、助産師は助産行為ができる。

 

ⅱ、助産行為は医療である。

 

ⅲ、助産師はある限定した医療を行うことの出来る職種である。

 

ⅳ、医療業務としての役割分担は助産師と看護師では明確な差がある。

私はこの一般常識に異論を唱えるものです。

 

まずⅱの"助産行為は医療である"は正しい表現だろうか?

 

果たして助産師は医療行為を行う事が出来るのか?

 

といった疑問がこの常識に対して沸く。

 

上段に提示した法からは"助産師がおこなう助産行為は医療である"という法説明が導き出せないのである。

 

保健師助産師看護師法第3条と30条で助産が規定されている。これからは、

 

"助産師の行っている助産"は"看護"と同様、医療ではない。

 

これは医療の枠外、医師法の外で行われている業務である。

 本題に入る前に助産という用語の明確な定義をしよう。助産は2元性に定義しなければ解決つかない。つまり保健師助産師看護師法下における助産と医師法下における助産の2つである。

 

①、1つは保健師助産師看護師法下における助産。これは医療ではない。これは助産師があつかう。

 

② あとの1つは医師法下における助産。これは医療である。これは医師があつかう。正常分娩であっても医療機関であつかえばこれは医療である。医療でなければ医師がこれをあつかうことが出来ない。疾患でもないものへの処置を医療と定義できるか。出来る。これは予防医療とみなすことができる。正常な分娩の経過を傍で見守り、異常が起き次第すみやかに処置を行う。最後まで異常が起きなかった場合でもこれは医療である。

 

助産を2元性に定義した。では、

 

医師、看護師、准看護師、助産師、4者の業務分担は以下のようになる。

 

ここでは医療でもない、医療の補助でもない、助産でもない業務も存在する。それは看護という業である。看護は法的に医療業務から独立する。看護師は自ら看護計画を立て、医師はこれに介入しない。看護師単独の判断で行うのである。

 

image32-1

 医療業務に限定して考えると医療業務は医師の行う医療と看護師、准看護師、助産師の行う医療の補助の2種で成り立っている(黒太枠)。助産師のあつかう助産は医療以外のところに位置する。医師の指示下で行う"医療の補助"は看護師、准看護師、助産師の3者の間で法的差は無い。3者同等である。

 

以上が現行法から導き出される4者の業務分担である。

 

 厚生労働省医政局看護科および看護協会は助産師の行う助産も医療であると錯覚した。助産師の行う助産も医療であるなら、医師法 第17条 医師でなければ、医業をなしてはならないという法と対立する。医師法下以外の医療行為を例外的に認めるという解釈はいかなる法令からも導き出せないのである。

 

これはむしろ次のような法解釈となる。

 

ⅰ、医療機関内における助産は医療と定義される。

 

ⅱ、医師でない助産師は"医療と定義された助産"をあつかうことは出来ない。

ⅲ、医療機関内で助産師がこれに参加するには医師の指示の下、医療の補助としての行為しかない。つまり医療機関内では助産師は看護師なのである。

 

 医政局長の言う、医師、助産師、看護師等の3通りの役割分担とはならない。医療機関内においては医師と看護師等の2種である。ここでの"看護師等"とは看護師、准看護師、助産師間の3者を指す。医療機関内で医療の補助を行うこの3者の履行可能業務に法的差はない。助産師にやらせてよいことは看護師にやらせてもよい。看護師にやらせていけないことは助産師にやらせてもいけない。やらせていい事といけない事の違いはその行為が医療であるか、医療の補助であるかにより決まる。医療行為となるならやらせてはいけないし、医療の補助であればやらせてよい。

 

 医師、助産師、看護師、准看護師の4通りの役割分担とは医療機関以外の場所を含めての考え方となる。医師法下でない助産をも含めれば医師、助産師、看護師、准看護師の4区別が存在する。というより"医師法下でない助産"つまり保健師助産師看護師下での助産には医師も看護師准看護師も参加出来ない。医師法下にないこの場所では看護師は助産の補助という行為を行うことは出来ない。同様、医師もこれに介入できない。ここは助産師単独の判断で行うのである。

image32-2

 看護師は医療機関にあってこそ助産に参加できる。助産を医師法下にある助産か保健師助産師看護師下にある助産かに区別しなければ、分娩における医師、助産師、看護師、准看護師の役割分担を明示することは不可能である。

 

この2つを区別しないで助産という用語を一括して定義をしようとしたところに医政局看護科の法解釈での無理が生じたと言っても過言ではない。

 

まとめ2分類の助産:

 

①保健師助産師看護師法下における助産:これは助産師単独であつかう。この場所での助産の補助が出来る看護師准看護師は存在しない。

 

②医師法下での助産:医療行為は医師が行い、医療の補助は看護師准看護師助産師が行う。医師法下では"医療"か"医療の補助"かの2種の業務分担しかない。

 

ここで先般医政局長が出した通知を見てみる。

医政局長通知

image32-1

 

 この通知の内容は既存法を繰り返しているだけに過ぎない。問題となった看護師の内診については何も言及していない。"その役割分担を守れ"という語句からは一方にとっては内診を禁じたと取れ、もう一方からは内診を許したと取れる。医政局長も今回のこの看護師内診問題では腐心されたのだとは思うが、結局この通知の前半で言っているのは、「1」"医師、助産師、看護師の役割分担を守れ"。そして後半では、産科医療において助産師数の絶対数が不足していることが今回の騒動の原因であるから「2」"各都道府県は助産師の育成に努めよ"である。

 

 「1」の“医師、助産師、看護師の役割分担を守れ”はその場所を医療機関外に置くか医療機関内に置くかで法的扱いがまったく別のものになって来る。先も述べたが医療機関外、つまり保健師助産師看護師法下の助産では助産師と看護師の役割は完全に異なる。看護師はこの助産に補助の手を出すことすら出来ない。対して医師法下の助産では看護師は医療の補助者としてこの助産に参加出来る。医師法下では助産師も医師の指示の下、医療の補助者としてこの分娩に参加する。助産師であっても医師の管理下に置かれる。ここにおいて助産師と看護師間に業務の差は起きない。医師法下の助産では医師による医療と看護師、准看護師、助産師による医療の補助の2種の役割分担は守られている。

 

となると「2」の助産師数の絶対数を増やせという政策も意味が無くなって来る。

結論:一例の出産がきわめて重要となり、高度な産科医療の要請と失敗が許されないものになってきている現代、この国の出産はすべて医師の管理下に置くべきである。助産師を完全に医師の指揮下に置く体制が必至であり、そうしなくてはこの国の産科医療レベルが保てない。

 

 全ての分娩を医師法下に置くとなると、必然的に保健師助産師看護師法下での分娩は皆無となる。その場合助産師という法的身分は不要となる。無医村離島においても教育を受けた看護師を置き、モニターをリアルタイムで都内にいる医師が見ていればこれは医師法下にある。情報力と患者輸送の機動力があれば救急医療体制は可能である。助産師養成より看護大学出で卒後教育を実戦的な産科医の基で身に付けた者を育てるべきであろう。

 

 しっかり未来を見据え、文部科学省厚生労働省を巻き込んだ産科医療スタッフ養成構想の再構築を図っていく必要がある。

第50章 X先生からYへ 6,20,20(P.52)

50、X先生からYへ 6,20,20

From: OO

Sent: Monday, June 20, 2016 8:14 PM

To: 八木 謙

Subject: Re: 医政局長通知

色々ありがとうございます。私も先生と同意見なのですが、前OO産婦人科医会長に見せたところブログ公開をたしなめられました。さすがにこの先生に見放されると私もこの地で生きていけません。いつも帝切等の手伝いをしてもらっています。少し考えさせてください。申し訳ないです。

第51章 X先生からYへ 6,22,20(P.53)

51、X先生からYへ 6,22,20

From: OO

Sent: Wednesday, June 22, 2016 8:16 PM

To: 八木 謙

Subject: wedgeの記事

いつも大変にお世話になっています。先生はもう読んでいるかもしれません。amazonで買ってpdfに変換しました。書籍には40-44頁、44頁に”OO教授にはすべてを報告していた。真相を知らないはずはない。取材には強迫だといって返答はない”とかいてあります。pdf化して送るのは本当は非合法ですのでpdfを読んだら削除してください。県の補助金を受ける人は潔白でなければいけない。スタップ細胞と全く同じです。県にも言っています。ブログはまだ考慮中です。

OO市OO

産科婦人科OO医院

OO O

第52章 YからX先生へ 7,13,9(P.54)

52、ブログが消えた 7,13,9

From: 八木 謙

Sent: Wednesday, July 13, 2016 9:50 AM

To: OO

Subject: ブログが消えた

OO先生

八木です。

先生のブログを拝見していました。

”自律的助産師”で検索すると沢山ヒットします。

だんだんと内容が充実して行く様子でした。

しかし昨日から消えています。

前医会会長等の反対とかにあってこの企画はもう断念されたのでしょうか。

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第53章 YからX先生へ 7,19,11(P.55)

53、YからX先生へ 7,19,11

From: 八木 謙

Sent: Tuesday, July 19, 2016 11:51 AM

To: OO

Subject: Re:

OO先生

八木です。

先生の状況は分かりました。

ではこの件は終了ということにしましょう。

お元気で。

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おわりに (P.56)

おわりに

 某産婦人科医と私の2人の共同作業は不発に終わった。だがこれを通じて明確な事実が見えてきた。その事実とは医療機関内で助産師法と医師法という2つの法が存在していたというのは誤謬であったということである。この誤謬は私を含むこの国のほとんどすべての産婦人科医が陥っていた勘違いであった。医療機関内には助産師法は存在しないのだ。それを過去に私は「助産師法と医師法の狭間で」とか「看護師の内診は違法か」とか「将来の産科医療に助産師は不可欠か」といった文章を書いてきた。それらはすべて誤りだった。どこが誤りかというと医療機関内で助産師法と医師法という2つの法が存在するという前提に立った理論構成であったからだ。正解は「医療機関内に助産師法は存在しない」という法的事実である。この発見のきっかけとなったのは保健所の保健福祉課とのやりとりからであった。

(メール16、YからX先生へ5,25,8 参照)

保健福祉課に私の抱えている問題を説明し、院内助産所の法構成を知りたいと申し込んだ。具体的には私が自院で院内助産所を設けたいと思ったらどういう法的手続きを取ればいいか教えて欲しいということである。岩国保健所管内で院内助産所の設立事例がなかったため即答は無かった。翌日、返事をくれた。厚生労働省に問い合わせたのだ。だからこれは厚生労働省の返事ということになる。回答は法的手続きは何もいらない。ただ当院は明日から院内助産所を開設しますと宣言すればそれでよい。つまり一般の産科医療機関と院内助産所との法的構造の違いはない。続けて保健福祉課は言います「助産師は医療機関内では医師の下で医療の補助をする看護師です」と。助産師免許を持っていても医療機関内では看護師である。医療機関内では助産師法はその効力を消失している。「助産師でなければ助産という業を行ってはならない、ただし医師法下ではその限りでない」と法文上に医師法下では助産師法は機能しないと書かれている。

① 医療機関内では助産師法は通用しない。

② 医療機関内では助産師は法的には看護師である。

この2つが明確になった。

 なぜ医療機関内で助産師法が機能していないのか。薬剤師法や臨床放射線技師法と対比して考えてみましょう。医療機関内でも薬剤師法や臨床放射線技師法は立派に機能している。薬剤師は医師の処方箋が無ければ薬は出せないし、臨床放射線技師は医師あるいは歯科医師の具体的な指示がなければ人体に放射線を照射することは出来ない。同様に助産師も医療機関内では医師の管理下になくてはならない。医療機関内で医師の管理下にない場所が存在してはならないのである。助産師は医師の具体的な指示の下助産行為ができるという法構造になっていない。その為、助産師が単独で助産を扱えるという助産師法自体が医師法下では消失するという法構造をとっているのだ。繰り返すが「助産師でなければ助産業を行ってはならない、ただし医師法下ではその限りではない」と法文上で明確に医師法下では助産師法は機能しないと謳ってある。

もし助産師法が医療機関内で機能していたなら、ここは助産師単独で助産を扱うことができる場所となり、医師の管理下から外れることになる。ゆえに医療機関内では助産師法は存在しないという法構造にしてある。

 助産師法が機能する時とはいつか。助産師免許を取り医療機関内で仕事をしているときは看護師である。10年、20年ここで修業し、晴れて自分の助産所を開業したとき、あるいは開業助産所に雇われていったとき、始めて法的な助産師免許が功を奏す。もし一生医療機関で働くならその免許は意味がない。ただ助産師の方が看護師より報酬を高く設定している医療機関はあるかもしれない。しかし仕事内容は助産師も看護師も法的には一緒なのだ。

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