声明

 平成16年12月に腹式帝王切開術を受けた女性が死亡したことに関し、平成18年2月18日福島県立大野病院産婦人科医師加藤克彦氏が、業務上過失致死及び医師法違反の容疑で逮捕勾留され3月10日に起訴されました。



Ⅰ、業務上過失致死及と医師法違反について

業務上過失致死:

起訴状によりますと加藤容疑者は、事前の検査で胎盤が子宮に癒着し、大量出血する可能性を認識していたにもかかわらず、本来行うべき子宮摘出などを行わず、胎盤を無理にはがして大量出血を引き起こしたことが業務上過失致死罪にあたるとあります。しかし、事前の検査で胎盤組織が子宮筋層に入り込んでいることを診断するのは到底不可能なことであります。更にこの癒着胎盤という疾患は1万例に1と極めて稀な疾患であり、その為の特別な用意を事前に成して置くことなどということはありません。今回の事例での大量出血の事前認識など誰にも出来ないのです。この緊急事態に遭遇した時、即座に子宮摘出に手術術式を切り換えるということを行わなかった事について、それはどの手術術式を採用するかは執刀医の裁量権内にあり、最初に他の術式を採用したことについては過失の責任を負わせるにそぐわないと思われます。業務上過失致死罪とは業務上必要な注意を怠り、よって人を死亡させる犯罪をいうとあります。彼の取った行為は充分な注意義務は果たされており、誠心誠意つくしたあげくの不幸な事故とみられます。輸血を1000ml 用意して手術に臨んだことをとっても充分な用意はされていたと言うべきであり、業務上必要な注意を怠たったという事実は無いと考えられます。

医師法違反:

 起訴状にある医師法違反とは異状死体の届け出義務違反ですが、異状死の解釈は法医学会、外科学会等でその解釈がまちまちです。確実に診断された内因性疾患で死亡したことが明らかである死体以外のすべての死体との考え方もあるし、病気になり診療をうけつつ、診断されているその病気で死亡すること以外を異状死と考えられるとする見かたもあります。このように明確な定義がないため実際にはしばしば異状死の届け出について混乱が生じているのが現状です。仮にこの症例が異状死の定義の範疇に入るとしても、その届け出義務の最終責任は院長にあり、執刀医ではないと考えます。



Ⅱ、逮捕拘留について

業務上過失致死及び医師法違反の容疑で逮捕。逮捕しなければならない理由は逃亡の恐れと証拠隠滅を防ぐ為と発表されました。事故から1年以上経って現在診療活動を行っている者に逃亡の恐れなどあるはずがありません。証拠隠滅を防ぐ為とありますが、隠匿しなければならない証拠は存在せず、20日以上の勾留のあげく新規に上がった物は何も無かったではありませんか。起訴に至った証拠はすでに事故報告書に記載されていたものから得られた物だけです。これは不正が行われたと疑って逮捕、その後勾留中に新たな証拠が得られると狙った行為と思われます。人権無視も甚だしい。ゲシタポや戦前の日本の憲兵隊を髣髴とさせる嫌悪を感じます。何も隠していることが無いのに自白を迫られる恐怖と無念さは想像するに耐えません。日本の警察の権威信頼は地に落ちたと言わざるを得ない。更にこの逮捕勾留の為に地方病院の産婦人科診療が閉鎖に陥ったこと。産婦人科医を志望する若い医師は減り、他の手術を行う科の医師も恐怖に慄くことになること。社会に与えた影響は多大なものと考えます。今後のこの国の健全な医療の存続を守る為にも、ここに今回の検察警察の行動に断固抗議するものであります。






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